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2007年03月20日(火) 10時03分

条例なし支出11区 香典、供花と二重支給も読売新聞

議員・OBの遺族へ弔慰金

 議員やOBが死亡した際に遺族に渡す「弔慰金」を、条例に基づかずに内規や要綱で支出している自治体が都内に11区あることが、読売新聞の集計でわかった。2001〜05年度には、現職・OB計70人の遺族に対し計918万円を支出、このうち10区は、通常の香典や供花を出しながら、さらに弔慰金も支払う“二重支給”の形になっている。弔慰金を巡っては、「議員だけの特権になり、おかしい」などの批判から、廃止や減額の動きも出ているが、今なお多くの自治体で、住民の監視の目が届きにくい形での支出が続いている。

 読売新聞が23区と26市を対象に調べた。

 この結果、議会の議決を経て作られる条例ではなく、役所内部の基準である内規や要綱だけを支出根拠にして弔慰金(香華料などを含む)を出している自治体は、中央、台東、墨田、江東、渋谷、中野、豊島、北、荒川、練馬、足立の11区。01〜05年度には、現職6人の遺族に計60万円、OB64人の遺族に計858万円が支出された。

 このうち、北、渋谷区を除く9区は、議会や区長からそれぞれ香典や供花を出しているのに、さらに弔慰金も支出。北区は、区長からの香典はないものの、議長から5万円の範囲内で香典が渡される上に、弔慰金も現職死亡の場合で10〜30万円、OB(2期以上)で5万円が払われる仕組み。渋谷区の場合、香典は出ないが、現職15万円、OBだと6万円の弔慰金が出る。

 5年間の支出総額が最も多かったのは足立区で、OB11人の遺族に対し計400万円を支給。個別にみると、05年度に亡くなった足立区議OBの遺族に50万円が支払われたのが最高額で、次いで多いのが05年度に中央区がOBの遺族に払った40万円だった。

 1件で最高200万円を支出できる仕組みだった中央区と、同50万円の足立区は今月、それぞれ内規を改めて減額したため、現時点では、中野区が5期以上務めた議員の死亡の際に支払う30万円が最高額となる。

 一方、内規や要綱ではないものの、条例に弔慰金支払いの条文を盛り込んでいる自治体も多い。区議会議員等表彰条例を根拠に弔慰金を支払っている目黒区では、香典や供花とは別に弔慰金を、現職死亡の場合10万円、2期以上のOBで5万円支給。府中市は3期以上のOBが死亡した場合に30万円払っている。

 武蔵野市の場合、市功労者表彰条例で8年以上務めた議員やOBを対象に弔慰金を支出できると定めているが、支出金額の上限については明文化された決まりはなく、その都度、話し合いで決めているという。

 また、弔慰金制度をもっていない自治体でも、議員やOBの死亡の際の香典が高額なケースも目立ち、最高20万円の香典を出している板橋区をはじめ、香典が10万円以上にのぼる自治体が6区あった。

 現時点で最高額の支払い基準をもつ中野区の担当者は「公費支出に対する区民の目は厳しくなっている。区議会とも相談しながら、見直しを検討しなければならない」と話している。

 全国市民オンブズマン連絡会議の清水勉弁護士の話「功労に報いる支出というなら、自治体への貢献度について細かな基準を設けることも必要になる。条例などに基づく明確な根拠もないうえ、香典と二重に支出しているなら、社会常識から逸脱していると言わざるを得ない」

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news001.htm