富士通はIT(情報技術)バブルが崩壊した02年3月期に単体で2651億円の当期赤字を出したが、今回の赤字はそれに次ぐ規模になる。連結決算では、すでに子会社の業績を予想に反映しているため、大きな下方修正はしない模様だ。
赤字転落の主因は、同社が3000億円を出資して保有する英国情報サービス子会社「富士通サービス」株について、2000億円規模の減損処理をすること。同子会社は国際会計ルールを採用した結果、それまで簿外債務だった年金債務を負債計上したため、純資産が目減りした。
子会社の業績回復の見通しが立っていれば減損処理の必要はないが、相次ぐ会計不祥事を受けて厳格になっている監査法人が「目減り分を早期に穴埋めするだけの業績は見込めない」と判断して処理を求めた模様だ。
こうした会計リスクが予想されるのに、富士通が英子会社に国際会計ルールを適用したのには、世界で通用する会計基準を用いることで市場の信認を得る狙いがある。海外では、欧州連合(EU)が域内の上場企業に国際会計基準の適用を義務づけている。
富士通は他の海外子会社でも減損処理をする方針だ。子会社株の減損処理に伴う業績の下方修正は、16日に日立製作所も単体で2000億円の当期赤字となる見通しを発表した例がある。