【仕組み】
ヒットの兆しをみせているのは、パイロットが10日に発売した「フリクション・ボール」(210円)。
これまでも、消しゴムで消せるボールペンは同社や三菱鉛筆が開発して売り出していたが、今回の新製品は「これまでのタイプとは原理がまったく違う」(パイロット営業企画部)という。
消しゴムで消すタイプは、紙の表面のインクを消しゴムで削り取る仕組みだった。これに対して新製品は、「熱を加えると、インクの発色を阻害する成分が動き出してインクが透明になり、消えたように見える仕組み」(同)なんだとか。
「消しゴムで消す方式だと、紙の繊維の内部にインクが残り、完全に消えないこともあった。その点、熱は伝わりやすいのでキレイに消せる」
新製品のボールペンの頭にはラバーが付いており、これでこすってインクを透明にし“消す”ことになる。
温度で色が変わるインク自体は、それほど目新しいものではない。例えば、冷たい飲み物を入れると模様の色が変わるコップなどにも使われている。
ただ、ボールペンの場合、多少の温度変化でインクが透明になってしまうと不都合も生じてくるので、「65度前後で透明に変化するようになっている」(同)という。
【出足好調】
通常のビジネス書類はボールペンで書くことが多いが、書き損じが悩みのタネ。
「特に社会人はボールペンの使用頻度が高く、書類への書き込みの際に消えるタイプのボールペンを望む声は以前から多かった」(パイロット営業企画部)という。
2001年には消しゴムで消せるボールペンが登場してきたが、それでもすっきりキレイに消せるところまではいかなかった。そこで開発された“究極のボールペン”が今回の新製品だ。
「フリクション・ボールは8色と色のバリエーションが多く、書類の校正段階で訂正部分を間違えた際などには、書類が汚くならず非常に便利」(同)と胸を張る。
現在の日本のボールペン市場は年間約6億本。多くの種類が出回っていることもあり、同1000万本売れれば大ヒット商品といわれる。
そんななか、この新製品は年間2500万本の販売を見込み、「3月10日の発売日からの出足は好調」(同)という。
米国では、書いた直後は消せても、2日もたてば消えなくなるボールペン「イレイザー・マックス」(ペーパーメイトブランド社)が消費者にウケている。
パイロットのフリクション・ボールも大ヒット商品になる可能性は十分ある。
ZAKZAK 2007/03/19