米海軍横須賀基地(横須賀市)に原子力空母ジョージ・ワシントンが配備される計画をめぐり、横須賀市と在日米海軍司令部、横須賀基地司令部が16日、横須賀市役所で防災協定を締結した。焦点となっていた「原子力軍艦」の扱いは、米海軍が市の主張を受けいれた。ただ、具体的な原子力事故の想定や対応については棚上げした形になっている。
(其山史晃)
覚書の署名後に記者会見した蒲谷亮一市長は「このような米海軍と市との防災協定というのは全国で初めてで、画期的と考えている」と強調した。
共同活動の対象とする災害の定義は「軍艦(原子力軍艦を含む)を要因とするものを含む、あらゆる災害」と記された。
「原子力災害は起きえない」と主張する米海軍に対し、市は「可能性は少なくても、事前に備えることを明記することが市民の安心につながる」と求めていた。
しかし、米海軍が従来の姿勢をがらりと変えたわけではない。蒲谷市長は、「軍艦の災害」について、原子力災害も含めた詰めを米海軍との間ではしてないことを認め、「そういう議論をすると昔の挫折に戻ってしまう」と苦しい胸の内を明かした。
市と基地は、以前も防災協定の締結をめざし、02年にいったん締結しかけたが、締結直前に原子力艦の扱いをめぐって米軍側が反発し、頓挫したことがある。
米海軍が譲歩した背景には、08年夏に原子力空母の配備が迫っていることが大きい。
市と米海軍は、今回の基本合意を受け、今後、覚書に基づいて作成される運用マニュアルや防災訓練のシナリオのあり方の協議に入る。原子力軍艦の原子炉事故や放射性物質の漏出といった原子力災害の検討は避けられず、どこまで実効性が確保できるのかが新たな焦点となる。
市長はこの日の会見では、「実際にどういう災害、トラブル、事故を想定して、それに備えた訓練をするのかはこれから詰める」と述べるにとどめた。
■横須賀市と在日米海軍との防災協定の概要
●目的と範囲 市や基地で働く者や居住者の生命と安全を守る共通の目標を持つ。緊密な協力と共同活動により、重要不可欠な公共サービスと基地機能を維持回復するための適時で効果的な活動を促進する。
●定義 軍艦(原子力軍艦を含む)を要因とするものを含む、あらゆる災害を意味する。被災者の搬送、食料や医薬品の提供、臨時避難所及び仮設住宅、緊急医療処置の提供等を含む。
●計画と実施に関する基本的事項 支援は、本来業務に支障のない範囲の資材を使用し、期間を限定して実施される。いかなる支援供与の義務を課すものではない。
●共同活動の範囲 計画と調整と情報交換のための連絡先を設置する。相手方に影響を与える可能性のある事象はすべて通知する。
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