「堀江さんには、すごいスピード感があった」
JR渋谷駅近くの雑居ビルの一室。ラフな服装の社員がパソコンに向かう。慶応大学経済学部を卒業後、ギフト関連会社「ソウ・エクスペリエンス」を立ち上げた西村琢さん(25)は、04年春に堀江前社長と会った時の印象を振り返った。
学生時代に温めていた事業計画について、堀江前社長と小一時間ほど話し合った。「おもしろいねえ。やろうよ」と応じた堀江前社長は、数日後には楽天やヤフーに協力を呼びかけていた。その速さに驚いたという。
事件について、西村さんは「『世界一になりたかった』というのは本心だったと思う」と見る。しかし、判決は有罪と予想する。「部下が考えたとしても、犯罪に該当しているのであれば経営者の責任かな、と」
「彼は、異様なまでに大きく出すぎた杭(くい)。だけどパイオニアとしての意義は計り知れない」。東大工学部3年で、教育関係会社「ホットティー」の社長でもある保手濱彰人さん(22)は、堀江前社長をこう評価する。
05年10月、保手濱さんは、起業家支援団体の企画で堀江前社長のカバン持ちを体験した。しかし、話しかけても、あまり相手にしてもらえなかったという。
しかし、彼の実績はすごいと思う。事件について「こういう人や手法をつぶしていいのか」とも考えるという。
ライブドアは現在も六本木ヒルズに本社を構える。30代の男性社員によると、事件や裁判の行方が社内で話題になることはあまりない。
堀江前社長にあこがれて入社した人の多くは同社を去り、買収された会社の社員がそれぞれの仕事を淡々とこなしているという。「『本業なき会社』という実感は昔のまま。堀江さんがいたころはまだ求心力があったのだが……」と、この社員は自嘲(じちょう)気味に語る。
法廷の堀江前社長は、被告人席でパラパラと資料をめくることが多い。「会社で仕事をしていた時とそっくり。感情がすぐ顔に出るところも変わらない」という。
この社員の印象では、同社の経理は宮内亮治被告(39)が握っていたという。堀江前社長は宮内前取締役を全面的に信頼していた様子だった。「それでも有罪だと思う。社長としての責任がある」
30代の元社員の女性も「無罪はないと思う。多くの関係者に迷惑をかけたから」と厳しい。
法廷で流した涙については「『僕は悪くないのに』という涙にしか見えない。会社代表というのは、株価を上げるだけでなく、責任をとることも仕事だ」と非難した。
損失を被ったライブドアの株主たちはどうか。
「株券はタンスの奥に放ったらかし」という男性(59)は、「裁判では論争がかみ合っていなかった。証券市場や法律の問題点が議論されることを期待していたのだが……」と残念がる。判決については「いずれにしても最高裁まで続くのでしょう」と冷ややかだ。
http://www.asahi.com/national/update/0315/TKY200703150176.html