日興の旧経営陣と現政権の関係が浮上してきた矢先、上場廃止にしないことで、早期に幕引きを図りたかったという狙いすらうかがえる。担当大臣がしきりに日興問題を終息させようとする趣旨の発言を繰り返していたことも気になっていた。
そうした意向をくまざるを得ない東証も、独立性が全くないことがあらためて白日の下にさらけ出された形だ。東証としては、“トゥー・ビッグ・トゥ・フェイル”(大きすぎてつぶせない)という発想から、3大証券の一角を上場廃止にすることを躊躇(ちゅうちょ)したという側面もうかがえる。
上場維持が決まったことで、シティのTOB(株式公開買い付け)価格の1350円は安すぎるという議論になってくる。TOBが成功しなかった場合、日本は外資に買わせないために日興を守った、と、米国の反発を招く可能性もあるだろう。
これまで私が何度も指摘してきたように、日興の会計をめぐる問題は、訂正報告書が出された利益の水増しにとどまらず、巨額の損失隠しなど数々の疑惑が残っている。それらを徹底究明しないまま幕引きすることに強い憤りを感じる。
日興問題では、検察など捜査当局がさまざまな角度から検討を進めていると聞いているが、今回の上場維持の決定により、プレッシャーを受けて動けなくなることを強く危惧する。
ZAKZAK 2007/03/13