「脱しがらみ」節約重ね
今年の統一地方選も多くの新顔が選挙に打って出るだろう。さて大きな後ろ盾もない元サラリーマンが挑戦したら、いくらかかるのか。1月にあった知事選に立候補した金子望さん(61)に「市民派の台所事情」を教えてもらった。(岡戸佑樹)
◇金子望氏に聞く
金子氏は、広告会社「電通」で、グループ経営推進局部長を最後に3年前、退職した。市民で作る政治団体「リセット山梨・県民の会」の候補者として擁立された。1万3315票で落選した。選挙戦について、「金と組織で動く甲州選挙に一石を投じることはできたと思う。結果的に300万円の供託金は没収されたが、惜しくはない」と振り返った。
■個人寄付けのみ
まずは収入。237万7千円。支持者ら30人の寄付金だけだった。これとは別に、供託金300万円は金子氏が退職金を切り崩して払った。
個人からの寄付にこだわった理由について、選対事務長を務めた慶応大文学部教授の川村晃生氏は「しがらみのない市民派の選挙をしたかったから」と語る。だが、この額は当初見込んだ「300万円以上」から大きく下回った。川村氏は「支持者だけでは到底足りなかった。県内のほかの市民派とされる人たちが、協力してくれると踏んだのだが……」と話す。
■投票前に撤退
一方の支出は205万5千円。内訳をみると人件費だけでは前職山本栄彦氏に比べたら21分の1以下に過ぎない。
節約には力を入れた。
例えば選挙の事務所費。探し当てた物件は家賃は月10万円。しかし投票日に設けられる投票所から300メートル以内の場所だった。公選法に抵触する。そこで「投票日前に撤退すれば違反にならない」と判断して、契約した。投票日前夜の1月20日午後8時。選挙運動の打ち上げもそこそこにスタッフ総動員で事務所を後にした。
かかった事務所費は計14万4千円。初当選した横内正明氏だと500万円だった。
経費の節約にスタッフによる「無償協力」が欠かせない。選挙カーの運転手や運動員は、陣営のスタッフが買って出た。ポスターの写真撮影は、支持者の写真家に無料で撮ってもらった。
法定得票数に達すれば、ポスターの印刷代などは公費で負担してもらえる。そうならない可能性も考え、費用も抑えた。
選挙ポスターは防水加工をしていない紙を使った。本来なら業者に任せるポスターの裏側に粘着テープを張る作業。だが支持者約20人が半日かけて無償でこなした。横内、山本両陣営がポスター作りにかけた費用の半分程度、70万円で済んだ。
■抵抗勢力作る
金子氏に尋ねた。
「お金をたくさん集めないと選挙には勝てないのか?」
金子氏は言う。
「特定の人、団体から多額の金を集めたら、しがらみが生まれてしまう。宮崎県知事選では、しがらみのない、カネもない、そのまんま東(東国原英夫)が勝ちました」。川村氏は「選挙には負けましたが、結果的に我々の約500万円で抵抗勢力を作ることができました。これから山梨の選挙は変わり始めるでしょう」と話した。
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