騒動以降、初めて開かれた森さんのコンサートに多くのファンが集まった=11日、福岡県飯塚市で
歌詞の改変問題が表面化して以来、初めてのコンサートが福岡県飯塚市の嘉穂劇場であった。「ご心配をかけましたが、僕の不徳の致すところです」。森さんは、1曲目を歌い終えると、1200人のファンを前に涙を浮かべながら、しばらく「おふくろさん」を歌わないと宣言した。
続いて約20曲を熱唱したが、川内さんが作詞した約30曲は含まれず、ラストは、定番の「おふくろさん」に代わって、「襟裳岬」だった。
デビュー当時からのファンで、大阪から駆けつけた阪口豊子さん(78)は、「セリフつきの『おふくろさん』を30年前に初めて生で聞いたとき、感動のあまり涙が出た。昔から歌っているのにこんなことになるなんて……」。
ことの発端は、昨年末の紅白歌合戦で森さんが歌った際、冒頭に「いつも心配かけてばかり いけない息子の僕でした」など約50文字の語りを入れたことだ。
これに驚いた川内さんは、森さんに説明を求めたが、約束の当日にキャンセルされたことから、「もうおれの歌は歌わせない」と態度を硬化。森さんが報道陣に囲まれて青森の自宅に謝罪に訪れたことについて、報道各社あての手紙で「三文芝居」と切り捨てた。さらに、日本音楽著作権協会(JASRAC)に「意に反する改変」と訴えた。
所属レコード会社によると、森さんは曲ができた6年後の77年から、別の作詞家がステージ用に作った語りを冒頭に入れた。川内さんに許可は取らなかったという。
JASRACは7日、森さんが歌詞を付け加えた「改変バージョン」は、川内さんの「同一性保持権」侵害の疑いがあるとの見解を出した。
同一性保持権が問題となった例としては、3年前、ジャズバンドPE’Z(ペズ)が合唱曲「大地讃頌(さん・しょう)」をジャズ流に演奏したCDが、作曲者の抗議を受けて出荷停止となったケースがある。作曲者が「編曲するなら事前に相談するのが礼儀では」として、同曲の編曲権と同一性保持権を侵害している、と訴えた。
半田正夫・元青山学院大学長(著作権法)によると、同一性保持権の侵害は、著作権者が改変により名誉を傷つけられたと感じれば成立するという。「かなり手を加えられても許す人もいれば、わずかの改変でも怒る人もいる。森さんが早く謝っていれば、川内さんの受け止め方も違っていたのではないか」
JASRACは、オリジナルバージョンの「おふくろさん」を歌うことはできる、としているが、森さんは川内さんと「和解」するまで歌うことは控えるという。
<キーワード:同一性保持権> 著作権法が保護する、著作者の精神的な権利である著作者人格権の一つ。「著作物は著作者の意に反して変更、切除などの改変を受けない」(20条)と定められている。最高裁は01年、人気ゲームソフト「ときめきメモリアル」のゲームの筋書きを変更できるメモリーカードを販売した会社に対し、同一性保持権の侵害にあたるとする判決を出した。