引き上げは日米両社の取締役会で承認・可決された。理由については「上場維持により、将来の見通しが改善したと判断した」としている。
日興株式は13日、上場廃止の恐れを注意喚起する「監理ポスト」から外れ、通常の取引銘柄に戻った。日興株には取引開始直後から買い注文が殺到して一時、約3カ月ぶりに1500円台まで急騰。終値も前日比86円高の1490円で、5営業日連続で当初TOB価格の1350円を上回った。
シティが6日にTOB価格を公表した時点では市場には上場廃止の懸念が高まっていた。廃止になれば、市場での売買ができなくなるため、多少TOB価格が安くても株主らが売却に応じるとの見方も多かった。しかし、東証が上場維持を決めたことでその前提が崩れ、TOB価格の引き上げ期待が一気に高まった。
市場の一部には、シティがTOBの価格引き上げによる負担増を嫌ってTOBを取りやめる可能性を指摘する声も出ていたが、シティは価格を大幅に引き上げても日興を傘下に入れる価値があると判断した。
一方、日興の1〜4位の大株主である海外の投資ファンド勢は「2000円の価値がある」などと主張していた。4ファンドで計26%超を保有しているだけに大幅な引き上げを見込む声もあったが、シティは350円の引き上げ幅にとどめた。
これでシティが過半数を取得するための投資額は当初の約6000億円から約7500億円に膨らむ見通し。全株取得する場合の投資額も、1兆2530億円から約1兆5800億円になる。
格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズは13日、シティのTOBが計画通り進めば、日興の格付けを格上げする可能性があると発表した。上場維持で「日興グループの信用力低下の可能性は後退した」としている。