「廃止が相当と認められるまでには至っていない」「組織的だったとまでは言えない」。東証の西室泰三社長は12日の記者会見で、苦しい説明を繰り返した。
東証の規定では、有価証券報告書の虚偽記載があった場合でも、上場を廃止するのは「その影響が重大と取引所が認めた場合」と定めている。今回の日興の不正決算の影響が「重大」かどうかは、市場関係者や識者の間でも見解が分かれ、日興の株価も大きく上下した。
野村修也・中央大法科大学院教授は「どのようなケースで上場廃止になるかを予測できるように、ルールを明確化すべきだ」と注文をつける。そのうえで「本来はカネボウの(問題発覚の)後で明確なルールをつくるべきだったのに、それを怠っていた」と批判する。
一方、大崎貞和・野村資本市場研究所研究主幹は「形式的な数値基準などを設けると、該当していないからいいという開き直りを認めてしまう」と指摘し、逆に取引所の裁量を広く認めるべきだとの立場だ。西室社長も「市場にはいろいろな要素がある。明確なルールだけで決めることは意図していない」と述べ、上場廃止ルールの一層の明確化には消極的な考えを表明している。
ただ、日興に対する東証の対応が、「上場廃止か維持」という二者択一しかないことについては、西室社長も「経過措置的な選択肢があってもいいとの提案がある」とする。こうした情勢を踏まえ、東証は昨年9月、有識者や市場関係者らでつくる「上場制度整備懇談会」を設置。上場廃止には至らない企業の不正決算などに対して、制裁金や別の市場区分に移すといった新たな処分を科す案を検討している。