日興コーディアルグループの上場維持を発表する東証の西室泰三社長
株式の上場維持決定を受けて記者会見する日興コーディアルグループの桑島正治社長(左)と木村一義会長
東証は昨年12月の不正発覚以降、投資家に上場廃止の恐れを注意喚起する「監理ポスト」に置いていたが、13日付で同ポストから外す。一方、12日付で日興に情報開示ルールに基づき注意勧告し、不正会計の舞台となった日興プリンシパル・インベストメンツなどグループ会社を含む社内管理体制の改善報告書を、26日までに提出することも求めた。過去最大の課徴金5億円の納付命令を、金融庁から受けたことを踏まえた措置だ。
大阪、名古屋両証券取引所も12日、日興株を13日付で監理ポストから外し、上場を維持すると発表した。
日興はコールセンター大手ベルシステム24の買収に絡み、連結に加えるべき損失を連結外に外したり、債券の発行日を偽ったりして不正に利益を計上した。日興の特別調査委員会は山本元・前グループ財務部門執行役常務らが不正に関与し、有村純一前社長の関与も疑われる、と指摘した。
東証は日興の一連の行為が上場廃止基準の「重大な影響」に該当するかどうかを中心に、慎重に調べてきた。西室泰三社長は12日の記者会見で「不正が組織的・意図的に行われたとまでは判断できなかった」と説明。同様に虚偽記載で上場廃止になったカネボウや西武鉄道と比べ、「日興が企業全体で不正に関与していたとの確証は得られなかった」と述べた。
上場維持決定を受け記者会見した日興の桑島正治社長は、「社会的責任を厳粛かつ真摯(しんし)に受け止めている。信頼回復に向け、グループ役・社員が一丸となって尽力する」と述べ、シティ傘下に入る方針に変更がないことを強調。シティも「上場維持はよいニュース。過半数の株式取得を目指す方針に変わりはない」(広報室)としている。
ただ、日興株の取得を進めてすでに大株主になっている海外投資ファンドが、TOB価格が低いとして反対している。上場維持で株価は上昇するとみられ、シティはTOB価格の引き上げなど買収戦略の練り直しを迫られる可能性がある。