「おふくろさん騒動」発生から20日。森が恩師の川内氏の作品封印を、初めて自分の言葉で明言した。「『おふくろさん』では、心配をおかけしました。しばらくは…、封印しておきたいと思います」。
2人が対立するきっかけは「おふくろさん」の冒頭にセリフを付けたことだったが、川内氏は森に対し、自作すべての歌唱禁止を突きつけている。そのため、この日のコンサートでは名曲「おふくろさん」だけでなく、定番の「花と蝶」や「命あたえて」「銀座の女」など川内作品をすべて封印。その代わりに、森自身が「コンサートで歌うのは久しぶり」と言う「湯けむりの町」や古賀政男メロディーの「影を慕いて」「人生の並木道」を選択した。
「いい年して泣いてばかりで恥ずかしいのですが…」。森は何度も言葉を詰まらせ、目を潤ませた。森昌子との離婚騒動、C型肝炎治療薬の副作用との闘い、そして川内氏とのあつれきの心痛。「人生には3つの坂があります。上り坂、下り坂、そしてまさかです。それが長くて、3年も続いています」。
ハプニング続きの3年間を振り返り、ファンの差し出したハンカチで何度も何度も涙をぬぐった。「厳しい冬の次には、必ず春が来ると信じたい。何の問題もない春が…」。思いを曲に託し、名曲「襟裳岬」では「♪襟裳の春は〜、何もない春です〜」と、満員のファン約1200人と大合唱した。
この日の公演で森はファンの温かさを再認識した。だが、怒り心頭の川内氏の怒りが解けるまで、“春”はまだ遠い。【松本久】