文科相の教委への関与の強化をめぐり、1月の政府の教育再生会議の第1次報告は「検討する」としていた。今月10日の中央教育審議会(文科相の諮問機関)の答申は「必要とする意見が多数」としたが、「地方分権の流れに逆行する」などとの反対意見も併記。与党の教育再生検討会(座長・大島理森元文相)は同9日、地方分権の理念を尊重する観点から厳しい条件を付けた上で盛り込むことを認めていた。
首相の判断は、こうした議論の流れにほぼ沿っており、基本的に文科相の教委への関与を強化するものだ。
地方教育行政法改正案のもう一つの焦点だった私立学校への教委の関与については、当初文科省が盛り込もうとした「指導」規定は設けないことにした。私立学校を監督する都道府県知事は必要な場合、教委に対して「助言」「援助」を求めることができる▽知事部局に学校教育の専門家を置くよう知事に促す——とした。
また、文科相が都道府県教育長の任命に関与する規定については、首相は「地方自治の力に期待し、設けない」と述べた。ただ、文科相が教委に指示や是正要求をした場合は、任命した知事や地方議会にその旨を通知し、事後評価を地方自治体に委ねるとしている。
首相は両大臣との会談後、記者団に対し、「国の関与のあり方については、地方分権を進めていくという考えだ。そして、国が最終的に責任を負わなければならないこともあるという観点に立った。私が当初から考えていた方向で判断した」と説明。「教育現場を一新し、教育新時代をつくっていきたい」と語った。
一方、首相はこの日、両大臣らに「速やかに3法案を提出するように」と改めて指示した。国会日程は4月の統一地方選や夏の参院選を控えて窮屈だ。政府・与党は成立を急ぐため、3法案の一括審議を図るとともに、連日審議が可能な特別委員会を衆参両院に設置することも検討している。