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2007年03月11日(日) 00時00分

従軍慰安婦問題 内外から批判『日米』懸念も 東京新聞

 安倍晋三首相が、従軍慰安婦問題をめぐる国会答弁で苦しんでいる。首相は元慰安婦へのおわびを表明した「河野官房長官談話」を踏襲する一方、慰安婦募集で「狭義の強制」があったことは否定した。これに対し、野党やアジアだけでなく、米メディアからも批判が続出。政権の新たな火種になりかねない状況だ。 (篠ケ瀬祐司)

 首相は五日の参院予算委員会で、慰安婦募集で業者による事実上の強制や、経済事情による不本意な応募という「広義の強制性」はあったが「官憲による強制連行という、狭義の強制性を裏付ける証言はなかった」と答弁した。

 首相は河野談話継承を明言した昨年十月の臨時国会でも、同趣旨の答弁をしている。首相として外交上、河野談話の継承は不可欠だ。ただ、首相就任前に「河野談話が認めた『慰安婦募集での官憲の直接加担』は証明されなかった」と明言した立場もある。そこで首相は「狭義の強制」はなかったが「広義の強制」はあったとの理屈で、野党側の追及をかわそうとした。

 五日も同様の説明をしたのだが、そもそも「広義・狭義」のニュアンスは海外に伝わりにくい。その上、首相が同日、米下院で審議中の慰安婦問題で日本政府の明確な謝罪を求める決議に関し「決議があったからといって(新たに)謝罪することはない」とも答弁したことで、波紋が一気に広がった。

 中韓両国は「慰安婦問題は日本政府が認め、責任を負うべき歴史の事実だ」などと反発。米国でも「日本は事実をゆがめることによって恥をかいている」(ニューヨーク・タイムズ紙)などと、強制の有無についてよりも、首相の姿勢そのものを批判する論調が相次いでいる。

 また、自民党内からも「米国が(安倍政権は)戦争責任を回避しようとする政権ではないかととらえ始めている」(加藤紘一・自民党元幹事長)と、日米関係の今後を懸念する声が出始めた。

 首相は九日の参院予算委員会で従軍慰安婦問題での考え方を問われると「事実関係について話をしたが、必ずしも正しく冷静に伝わらない」と、「広義・狭義」論を封印したが、今後も追及されるのは必至。首相就任後初の訪米が四月に控えているだけに、事態沈静化のための追加説明が必要になりそうだ。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20070311/mng_____sei_____002.shtml