答申に先立って開かれた分科会で石井知事は、国の是正指示が必要な場合として答申案に盛り込まれた「憲法に規定された教育を受ける権利が侵害され、教育を受けさせる義務が果たされていない場合」との文言を削除するよう求めた。「未履修を想定しているのだろうが、そのことについては、ほとんど議論されていない」との理由からだ。
結局、その部分の修正はなく、石井知事はただ一人答申案を了承しなかった。
片山善博・鳥取県知事は「タイミングの問題があり、時間的制約があるのはやむを得ない」とする。
そのうえで「今、立ち往生している教委をどうするかが大事な問題なのに、その議論が欠落していた。地方自治にほころびが出ている。議会がきちんとチェック機能を働かせるなど、自浄能力を高める必要がある」と審議を振り返った。
■自殺生徒遺族『先生が苦しむだけ』
中教審の審議の中で国の是正指示などが必要な場合として例に挙げられたのが「いじめ自殺に教委が適切に対応しないとき」だ。しかし、いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(事務局・川崎市)理事の小森美登里さん(50)は「国の権限強化で、縛りをきつくすれば、現場の先生を余計に苦しめるだけ」と懸念する。
一九九八年に長女の香澄さん(当時十五歳)をいじめによる自殺で亡くし、全国の学校で講演する小森さんは、学校現場が教委の出す数値目標に縛られ、いじめや不登校の件数などを正しく報告できない実態を教員などから打ち明けられたという。
いじめ件数について「本当の数字など上げてない」と認める校長も。「学校の評価を下げれば、予算が減る。冬を越す灯油も買えなくなる」と説明したという。
小森さんは「本当にいじめをなくすために制度を変えたいというなら、先生が自由に発言できるよう、縛っていたものをなくすことから始めるべきだ」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070311/mng_____sya_____010.shtml