国と教育委員会、学校の関係
伊吹氏は12日、安倍首相や関係閣僚に答申内容を報告する。与党も3法案の骨子案をすでに了承しており、文科相の教委への指示などは、限定した上で盛り込む方針。政府・与党は安倍首相の判断を受けて、3法案の月内の国会提出に向けて詰めの作業に入るが、中教審の多数意見の方向で進むとみられる。
答申では、文科相の教委への指示などについて、生命や身体の保護のため、緊急の必要がある時や憲法に規定された教育を受ける権利が侵害されるなど「極めて限定された場合」に限り必要とする意見が「多数出された」と記述。一方で、「地方分権の流れに逆行している」「(地方自治法にもとづく)是正要求を行ったことがないのに、より強力な関与を設ける必要はない」といった強い反対意見が出たことも併記した。
さらに、文科相が指示などをする際には「専門家などで構成される調査委員会などの報告を参考に対応すべきだ」などとする意見が審議で出たことにも触れた。
文科相が都道府県教委の教育長任命に関与する仕組みについては、「賛成意見はほとんどなく、これを採らないことが適当だ」と明確に否定。私立学校への教委の関与をめぐっては、指導を「可能としないことが適当だ」と否定。
答申ではほかに、(1)副校長や主幹といった校長の補佐役や、指導教諭という他の教諭に助言できる職制を幼稚園から高校に新設する(2)義務教育の目標に「我が国と郷土を愛する態度を養う」「公共の精神」といった徳目を盛り込む(3)大学が特別の課程を修了した人に履修証明を出す制度を設ける(4)教員免許に10年間の有効期間を定めたり、教委に不適格教員への研修を義務づけたりする——などの法改正を認めた。
教育3法案をめぐる中教審の審議は、2月6日に始まった。諮問から答申までは通常1年程度かかるが、今国会に法案提出を間に合わせるために週末ごとに集中的に会議を続け、約1カ月で答申をまとめた。10日の中教審では、石井正弘・岡山県知事は「拙速だ。地方分権と規制改革に反する。了承するわけにはいかない」と反対意見を表明した。