死亡したのはコメルサント紙の軍事記者サフロノフ氏(51)。今月二日夕、自宅アパート最上階から墜落する前、争った形跡がないことから自殺とみられていた。
しかし、同紙の同僚や家族は「自殺する理由は見あたらない」と証言。さらに、先月後半から突然、原因不明の体調悪化に悩ませられていたことから、コメルサント紙編集局は、幻覚などを引き起こす薬物を盛られた可能性もあると再捜査を依頼した。
コメルサント紙によると、同記者は、死亡する直前、ロシアがシリアやイランに最新型の地対地ミサイル「イスカンデール」や最新戦闘機「スホイ30」を供与するとの機密情報を得ていた。
ロシアからシリアへのミサイル輸出交渉については二〇〇五年にも暴露され、この時は米国やイスラエルの強い反対で、プーチン大統領が交渉凍結を表明せざるを得ない状況に追い込まれた。
今回の機密情報については、これが報じられた場合、国家機密の漏えいに当たるとして連邦保安局(FSB)は、同記者を立件するとの方針を本人に伝えていたという。
コメルサント紙は、かつてプーチン政権と敵対する政商ベレゾフスキー氏が所有していたが、同氏の英国亡命後は政府系ガスプロム・メディアの傘下に入っていた。
しかし、編集局にはベレゾフスキー氏株主時代の記者も多く、FSBの元中佐リトビネンコ氏殺害では、ロシア政府の事件関与の見方も報道。昨年十月に射殺されたポリトコフスカヤ記者の所属するノーバヤ・ガゼータ紙とともに、政権批判もいとわない数少ない新聞の一つとされている。
今回のサフロノフ記者不審死について、ロシア・ジャーナリスト連盟のヤコベンコ事務局長は、「ロシアでは一九九三年以来、二百十四人の記者が変死しているが、一件も事件が解明されていない。今回の事件がその一つに加わらないことを願う」とコメントした。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20070310/mng_____kok_____001.shtml