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2007年03月09日(金) 00時00分

「船の管制塔」東京湾守り30年朝日新聞

  東京湾を航行する船舶の安全を確保するために設置された東京湾海上交通センター(横須賀市鴨居4丁目)が今年で30周年を迎えた。1日に700隻もの船舶が出入りする世界でも有数の船舶交通量を誇る東京湾の安全は、どう支えられているのか。

(其山史晃)

  ■24時間態勢で情報提供

  国土交通省によると、海運による外国貿易と国内の物流量は31億6786万トン(04年)。このうち東京湾内の主要港(東京、川崎、横浜、横須賀、千葉、木更津)を合わせると5億6482万トンを占める。

  昭和40年代の高度成長期の東京湾は海上交通量が増え、交通整理のしようのない危険な状態だった。世界各地でタンカーの座礁事故が相次いだこともあり、「航海の自由」という原則にメスを入れたのが73年に施行された海上交通安全法だ。

  この法律により、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海にある航路ごとの航法が定められた。東京湾には「浦賀水道航路」(幅約1・4キロ、長さ約15キロ)と「中ノ瀬航路」(幅約700メートル、長さ約10キロ)があり、全長50メートル以上の船舶はこの航路を12ノット(時速約22キロ)以下で航行しなければならない。

  海上交通センターは、こうした流れのなかで77年に設置され、航行管制業務を開始した。

  海上交通センターには、観音崎、本牧、海ほたる、浦安に設置された四つのレーダー施設の情報が集約される。このレーダー情報や船舶からの無線交信により、24時間態勢で運用管制室につめる10人の管制官が、管制計画表の作成や、船舶に対する注意喚起の役割を担う。

  センターの会田賢仁・運用管制課長は「東京湾には、全長200メートル以上の巨大船から漁船まで目的の異なる様々な船がいる。その船ごとの特性をつかんで適切な情報提供をすることが大切」。

  船舶の識別符号、種類、位置、速力といった航行の安全に関する情報を自動的にVHF(超短波)で送受信する船舶自動識別システム(AIS)の搭載も進んでいる。船の位置通報が自動化されることで、船の乗組員が運航作業に集中でき、衝突事故を防ぐシステムだ。08年までに300トン以上の外航船と500トン以上の内航船に義務化される。

  ■浮標衝突多発に悩みも

  近代化による安全確保が進む一方、航路や浅瀬を示す浮標の補修のような地道な作業も続けられている。

  横須賀海上保安部が担当する浮標は98基あるが、最近担当者が頭を痛めているのは、貨物船やタンカーによる浮標衝突事故。例年は1、2件だが、06年2月から1年の間に10件起きている。

  黒澤健一・航行援助調整官は「すべてが夜間に発生し、見張り不十分が原因。航路の幅は十分広いはずなんですが」とこぼす。なかでも浦賀水道航路から中ノ瀬航路に入った所にある浮標「中ノ瀬1号」は06年5月14日の一晩で2回、同じ年の9月にもぶつけられた。

  衝突した瞬間に浮標から特殊なペンキが船体に発射されるため、当て逃げは不可能という。船会社が契約する保険会社が補償するが、調整が遅れがちで、1年近くも修理されないケースもある。

  浮標は波で常に縦にも横にも揺れる。灯火のある頂点にのぼっていくほど、揺れも激しくなり、うっかりすると振り落とされそうになる。この仕事について1年になるという今井達朗さんは「いまでも作業中に酔うことはたびたび。でも、整備が船の安全航行につながり、ひいては日本の経済の手助けになると思っています」と話す。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000703090005