厚労省は国民の意見を募るとともに、四月にも専門家による検討会をスタートさせるが、刑事訴追の可能性があるケースの取り扱いなど検討課題は多く、関係者間の調整は難航も予想される。
医療事故をめぐって近年、民事訴訟が増加する一方、医師の刑事責任が問われるケースも目立つ。昨年、妊婦死亡をめぐり福島県立大野病院で医師が逮捕、起訴された後は、医療現場が司法に強く反発するなどし中立・専門的な機関の設置を求める声が強まっていた。
素案によると、創設される機関は解剖医や臨床医、法律家からなる調査・評価委員会と、事務局で構成。中立、公正性や秘密保持が求められるため、行政機関か行政機関の中の委員会として設置するとしている。全国または地方ブロック単位とするか、都道府県単位とするかは今後検討する。
調査は、日本内科学会が実施しているモデル事業を参考に(1)死因を究明するため解剖、画像検査、尿・血液検査を実施(2)診療録の調査や関係者の聞き取り(3)結果を評価、検討(4)報告書の作成(5)報告書を当事者に交付し個人情報を削除して公表−を例示。結果を再発防止に役立てることも検討する。設置には必要な立法措置をとる。
ただ、医師は異状死を二十四間以内に警察署に届け出ることが義務付けられている(医師法二一条)ことから「新たに創設する制度との関係を整理する必要がある」と指摘。刑事訴追の可能性がある場合の調査結果の取り扱いや報告書を民事訴訟などでどう活用するかも課題としている。警察庁によると、医療事故の届け出は一九九九年ごろから急増、立件は九九年の十件から二〇〇六年には約十倍の九十八件に達した。〇四年には日本医学会加盟の十九学会が第三者機関創設を求める共同声明を出している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070308/mng_____sya_____006.shtml