【虎視眈々】
関係者によると、KKRのほか、米テキサス・パシフィック・グループ(TPG)や英ベルミラなどの海外ファンドがNPI買収に意欲をみせ、すでに投資銀行を通じて事業・資産買収の意向を打診。国内ファンドも注目しているという。
KKRは、1980年代に米タバコ・食品大手のRJRナビスコを買収したことで一躍有名になった。米トイザラスや米病院チェーンなどの大型買収を手掛け、昨年4月に東京オフィスを開設した。
NPIは、日興の100%子会社として2000年に設立。自己資金による投資を手掛けているが、最近では「不正会計の舞台」として名前が挙がることが圧倒的に増えていた。
そのNPIは、子会社のペーパーカンパニーを通じてコールセンター大手のベルシステム24を買収した際、ベル社の株価に連動する他社株転換社債(EB債)を使って、不正な利益の水増しを行った。
引責辞任したNPIの平野博文前会長は、利益水増しに「直接かつ主体的に関与した」とされ、日興現経営陣による損害賠償請求対象者の1人にもなっている。
一方、近く日興にTOB(株式公開買い付け)をかけるシティは、日興を子会社化した後、法人営業を中核に再編する方針。NPIは不正会計問題で信用力が著しく低下しており、売却は避けられないとの見方が強まっている。
【絶好の買い物】
一方、投資ファンドにとって、NPIは絶好の買い物に映るようだ。NPIは昨年末の投資残高が4500億円強と規模が大きく、収益性の高い投資先も抱えているためだ。
同社はホームページ上で、「実績こそがわれわれの『投資力』を実証しています」と、これまでの投資実績を誇らしげに記載している。
ソニーが手放した旧ソニープラザやフランス料理店マキシム・ド・パリなど小売事業に51%出資しているほか、西武ホールディングスやタワーレコードなどにも投資している。
投資先企業の中には、将来的にIPO(株式公開)によって巨額の利益が期待できる“金の卵”も抱えている。このためNPIをまるごと買収することのほか、投資案件を個別に買い取ることを検討するファンドもあるもようだ。
【豊富な投資実績・人脈が魅力】
また、NPIが大手証券の傘下で豊富な投資実績を持ち、中小から大企業まで人脈を持っている点も大きな魅力と映っているとみられる。
KKRなどは日本に本格進出して日が浅く、投資案件の掘り起こしが課題となっている。日本に進出する外資にとって、将来有望な技術や、ユニークなビジネスモデルを持った企業を掘り起こすのは容易ではない。
M&A(企業の合併・買収)による再編を狙う場合も、日本の企業社会に張りめぐらされた関係を知っていれば、業務の効率が上がることも期待できるというわけだ。
それにしても、欧米の金融グループが日本での事業拡大を狙う一方、巨大ファンドが日本での買い物を探しまくっているこの時期に経営がグラ付いた日興は、最悪のタイミングで最悪の事態を招いたといえる。
ZAKZAK 2007/03/08