昨年6月に破産した「平成電電」を巡る巨額詐欺事件で、逮捕された元社長の佐藤賢治容疑者(55)らは2004年11月に投資家から出資金を募る際、「特典」と称し、平成電電の新株予約権(新株を優先的に購入できる権利)を、少なくとも100人を超える投資家に無償で譲渡していたことがわかった。
当時、同社は新興のベンチャー企業として注目されており、この権利を行使して同社の株式を購入した投資家もいた。警視庁捜査2課は、株式の上場を期待する投資家の心理につけ込み、多額の出資金集めに利用したとみて調べている。
同社は、関連会社の「平成電電設備」と「平成電電システム」が、匿名組合を設立して投資家から集めた資金をもとに、03年7月から固定電話サービス「CHOKKA(チョッカ)」を始めた。
この時点で、佐藤容疑者らは、投資家に対し、出資金1口100万円につき8%の配当を支払うと説明していたが、捜査2課が平成電電の財務状況を調べた結果、CHOKKA事業は当初から赤字で、これだけの配当は不可能だった。
しかし、佐藤容疑者らは04年11月になると、投資家への配当率を10%にまで引き上げたうえ、出資金1口につき同社の新株予約権5株分を無償譲渡するとして出資を促した。この月だけで数百人の投資家から、前月の4倍にあたる約39億円の出資金を集めていた。
この際、多くの投資家が新株予約権を受け取ったとみられ、実際にこの権利を行使し、1株20万円で同社の株式を購入した投資家も少なくなかった。
同社はこれ以降も、テレビCMを展開して毎月約26億〜50億円の出資金を集めており、捜査2課は、佐藤容疑者らが、破たん状態にあった同社の内情を隠すため、新株予約権や派手な宣伝を使い、資金集めの規模を膨らませたとみている。