「お互いに、もうちょっと話し合えばすぐ解決できるようなけんかばかり。児童同士に遠慮があったり、もめた理由をうまく説明できなかったりしたのでしょう」と当時を振り返る。
詩を通じてコミュニケーション能力をはぐくもうと決めたのは、この三年生が四年生に進級するころ。「詩で視点のおもしろさを教えれば、児童は飛びつくだろうと思ったのです。物語を読ませるのでは、読み終えるまでに時間がかかる。俳句では、技術をまず教えなくてはいけません」
四年生の一学期は有名な詩を紹介して、まねてみたり、言葉遊びに興じたりすることで、子どもたちを詩に慣れさせた。ある詩の中に、優しさを表した言葉を見つけた児童は、「こういう優しい心を持たなきゃいけないな」と感心していた。
二学期からは授業や宿題などで折に触れて詩を書かせ、それらを週一回ペースの学級通信で取り上げ、コメント付きで配った。詩の題材には身近な話題を選び、児童の本心が表れるよう、名前を書かなくていいと配慮した。お互いに詩を書いて読み合うところまで、クラスがまとまってきた。
「詩をたくさん学ぶことで、一歩踏み込んで物事を考えるようになった」「詩を見てくれる、読んでくれる人が身近にいると、もっと書ける」。素直で喜ばしい児童らの反応だった。
保護者からは「うちの子がこういうことを考えていたとは」との驚きや「父親が毎回、詩の学級通信を楽しみにして帰ってくる」との声が寄せられた。名前がなくても、親たちはわが子の詩がどれか分かったといい、子どもたちも喜んで詩を書いた。
詩に囲まれた一年間を終える四年生の終業式。最後に教室へ戻った小山さんは、児童から「これは、僕たちが書いたんです」と詩集をプレゼントされた。一人一人が素直に「ありがとう」の気持ちをつづった手作りの詩集だった。
受賞論文の全文は東京新聞ホームページに掲載しています。
アドレスは、http://www.tokyo‐np.co.jp/event/kyoiku/
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tko/20070305/lcl_____tko_____001.shtml