名古屋地検特捜部と公正取引委員会は、「決別」に向けての各社の取り組みが不十分だったとして、法人としての刑事責任を追及する。あわせて、談合を知りながら防止策をとらなかった会社の代表者の責任を問うことができる独占禁止法の「三罰規定」が適用できないか、慎重に調べを進める模様だ。
関係者によると、「談合決別」の方針が固まったのは05年11月下旬。東京都内で鹿島、大成建設、大林組、清水建設の社長らが顔を合わせた。
席上、業界団体のトップを兼ねる首脳が、改正独禁法の罰則強化などを理由に「こんなことを繰り返していれば、会社の存続が危うくなる」と強い危機感を示した。各社がこれに同調して「決別」の方向が固まった。
具体案は、土木分野に強い鹿島、大成建設、大林組の3副社長に委ねられた。数回の協議を経て、「決別」の時期について、年度が替わる「06年4月1日から」としたが、社長会側の意向で改正独禁法の施行に合わせて「06年1月4日」に変更された。
最終決定は05年12月21日。この日午前、日本建設業団体連合会(日建連)で常任理事会があり、出席した4社の社長が理事会後も残り、副社長から報告を受けた。
検討項目には、(1)05年中に談合で決めた工事(2)06年3月末までの年度内発注分(3)事実上、数年前から「本命」が決まっているダムなどの大型工事——が列挙され、この3項目について、副社長側から「粛々とやりたい」と談合を継続する意向が示された。
しかし、社長会がこれをすべて却下し、改正独禁法施行と同時に「談合から決別する」ことを申し合わせた。さらに「独禁法の遵守(じゅんしゅ)」を求める文書をまとめ、翌22日、日建連と日本土木工業協会、建築業協会の業界3団体の会長連名で会員各社に送った。
文書では「疑わしい行動は行わないなど、コンプライアンスの徹底を」などと記されていたが、「談合」の文字はなかった。「談合決別を公にすれば、これまでの談合を認めることになる」(出席者の一人)というのがその理由で、このため、「決別」の意図は業界内に十分、伝わらなかったとみられる。
名古屋地検特捜部は、大手各社の東京本社を捜索した際などに、社長、副社長らからも任意で事情聴取し、談合決別を決めた経緯や、本社から支店などへの具体的な指示の内容、本社側の談合の把握状況などを捜査。公取委と連携し、資料の任意提出を受けるなどして調べている。