アフマディネジャド大統領は、テヘランの空港で出発前、報道陣に「地域のため両国が行うべきことを話し合う。両国のきずなを強化したい」と述べた。サウジ国営通信によると、リヤド空港ではアブドラ国王が出迎えたという。
首脳会談の主な焦点となるとみられるのは、(1)イランの核開発問題(2)10日に開かれるイラク安定化のための国際会議などのイラク情勢(3)レバノン情勢——の3点だ。
中東では、サウジが豊富な資金力や米国との太いパイプ、「イスラム教の聖地メッカの守護者」としての宗教的な影響力などを背景に、スンニ派諸国を中心に大きな力を持っている。一方、親米王制を転覆したシーア派革命政権のイランは、レバノンのシーア派組織ヒズボラなどの支援を通し、「反米」を軸に中東での影響力を増している。
サウジがまず警戒感を強めているのは、イランが「平和目的」として進めている核開発問題だ。
昨年12月、サウジなど湾岸6カ国が、イランに対抗するかたちで、共同で平和目的の核開発を進めることを表明した。年が明けた2月にロシアのプーチン大統領がサウジを訪問した際は、首脳会談でロシアからの兵器購入と核技術供与を協議してイランを牽制(けんせい)した。
一方、アフマディネジャド大統領にとっては、イランに強硬姿勢を取る米国に近いサウジから、平和目的の核開発への支持を取り付けられれば、大きな得点となる。
またイラン側には、レバノン、イラクで激化する宗派間対立の解決にシーア派大国として積極的な関与を示し「中東での安定を求める立場」を強調する狙いがある。
イラク情勢では、サウジはイラクでは少数派のスンニ派を擁護する立場にあり、シーア派主導のマリキ政権を具体的に支援しにくい状況にある。一方でイランは、マリキ政権の支援を強めることが自国の利益につながるとみている。テヘランの外交筋は「サウジなどスンニ派諸国は本気でマリキ政権を支援していない。それを見越して、マリキ政権への支援強化を求めることができるのがイラン側の強みだ」と話す。
レバノンでは、イランが支援するシーア派組織ヒズボラが、サウジが支えるシニョーラ政権の退陣を求め、両派の衝突で死者が出ている。両国はともに対立の緩和などを呼びかけるとみられる。