審査を担当する東証上場部は、来週末にも不正決算に関する調査と事実関係の分析を終え、3月中旬までに西室泰三社長が上場廃止を最終決定する方向だ。大阪、名古屋も月内にも廃止を正式決定する見通し。廃止されても証券業務は継続でき、顧客が預けている資産にも影響はない。
東証は昨年12月に不正決算が発覚して以降、日興への聞き取り調査を進め、日興が2月末に04年9月中間〜06年9月中間期決算の訂正報告書を関東財務局に提出後、報告書の分析を進めてきた。
日興はコールセンター大手のベルシステム24の買収に絡み、連結に加えるべき損失を連結外に外したり、債券の発行日を偽ったりして不正に利益を計上した。
上場廃止の判断で焦点になるのが、一連の行為が、廃止基準の「有価証券報告書の虚偽記載を行い、その影響が重大である」に該当するかどうかだ。
東証は、日興の特別調査委員会が、山本元・前グループ財務部門執行役常務らが一連の不正に関与し、有村純一前社長の関与も疑われる、と指摘したことなどを重視。最終的に利益の水増しが2年間で約420億円にのぼったこともあり、「組織ぐるみの不正は悪質で、市場や投資家に与えた影響は大きい」との見方を強めている。
廃止決定の場合、東証は1カ月間、日興株を売買可能な「整理ポスト」に置く。日興の個人株主は06年末で約9万5000人。廃止後も証券会社を通じて売却できるが、常に買い手がつくかわからず、価格も不安定になる可能性がある。
日興の現経営陣は、有村氏ら前経営陣に総額31億円の損害賠償請求訴訟を起こす方針を表明するなど、過去との決別姿勢を示すことで上場維持へ期待をつなぐ一方、廃止を前提に提携戦略も検討してきた。信用補完のためにシティグループとの協議を中心に、他の金融大手との提携強化などの対応を急ぐ考えだ。
シティは、日興を日本での事業拠点と位置づけており、上場廃止の場合は、日興の完全子会社化も視野に入れている。