他人のID、パスワードを悪用してサイトに接続するなどの不正アクセス行為について、警察庁が接続元を調査したところ、56%は不特定多数が利用するインターネットカフェだったことがわかった。
容疑者がわからない事案の場合、7割近くがネットカフェで、匿名性が捜査の「壁」になっている。同庁は近く、業界団体に会員制導入など客の身元確認の徹底を要請する。だが、店側には「厳しくすると客が逃げる」と消極的な声もあり、“自主規制”は容易ではなさそうだ。
調査の対象は一昨年に全国の警察が認知もしくは摘発した不正アクセス行為。容疑者の供述や通信記録などから接続元を調べた結果、判明した483件のうち56%に当たる271件でネットカフェが使われていた。
容疑者が特定されていない事案(212件)の中で見ると、ネットカフェが66%(139件)を占めた。いずれも客の身元確認をしていないか、利用記録を残していないため、接続した人物にたどりつけなかったという。
昨年、警視庁に詐欺容疑で逮捕された無職男は、身元確認がない店のパソコンを使って500人分のパスワードなどを不正取得。他人になりすましてネットオークションで商品券やDVDなど(計550万円相当)をだまし取っていた。
この事件では、捜査員が商品の送り先に張り込むなどして男を特定したが、摘発に至るまでに時間がかかり、被害が拡大してしまうケースも多いという。
ネットカフェや漫画喫茶でつくる業界団体「日本複合カフェ協会」(東京都千代田区)は、以前から、身分証明書の提示を求める会員制の導入や防犯カメラの設置などを呼び掛けているが、全国約3000店のうち加盟しているのは1380店(2月現在)。このうち会員制を採用しているのは7割程度だ。
多数のネットカフェが営業している新宿区内のある店は「客に面倒な手続きをしてもらうと、他店に流れてしまう」と会員制には否定的。別の店の関係者も「『だれでも気軽に』が売り。強制でもないし、メリットはない」と言い切る。また、大手店の運営会社の担当者は「必要性は理解できるが、客の個人情報をどう管理するかも問題。十分な体制が整わないと情報流出のリスクがあり、簡単にはできない」と話す。
これに対し、警察庁は「客の身元確認や利用記録の保存などがなされるよう、当面は業界の自主努力を見守りたい」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070303it05.htm?from=top