「シャッター街に現代美術を展示」「ボランティアも出資し成功したら配当金」——。アートを起爆剤に街づくりに成功した北東北地方の事例をもとに、それぞれの仕掛け人がノウハウを披露する講演会が3日午後1時半から、福島市森合の県立美術館で開かれる。地域との連携を目指す学芸員たちが企画したもので、文化活動が「街づくり」のカギとなっている様子がうかがえる。
講演会は「連携のノウハウ まち・ミュージアム・アートをつなぐもの」。主催は福島県学芸員連絡会議など。県内外のさまざまな美術館や博物館に勤める学芸員の有志44人が作る任意のグループだ。
紹介するのは三つの事例だ。一つは岩手県花巻市の旧東和町土沢地区で、05年10月に実施した「街かど美術館 アート@つちざわ」。シャッターの閉まった店が目立つひなびた商店街を、そのまま現代美術の会場にした。仕掛けたのは、近くにある萬鉄五郎(よろずてつごろう)記念美術館の学芸員だ。
酒屋の2階や倉庫、米屋の板塀やつぶれたバーの駐車場といった「使われていない場所」はもちろん、開店中の薬局や床屋の店内まで計77カ所にプロやアマチュア約130人が作品を展示。各地から観光客や若者が集まり、「宝探し」のようなにぎわいになった。
当初、懐疑的だった商店の人たちも盛況ぶりに驚き、昨秋規模を広げて2回目を開いている。
独特の「子どもの顔」で知られる奈良美智(よしとも)の作品を、青森県弘前市の吉井酒造煉瓦(れんが)倉庫に飾った「奈良美智AtoZ」は、公費に頼らずすべて民間出資で成功させた点がポイントだ。
約800人のボランティアまでが、「成功すれば配当を出す」との条件で、1人10万円単位で出資した。結果は黒字となり、過去3回、同じ方式で開いている。昨年7月〜10月の会期中には全国から約8万人が訪れた。
講演会場となる県立美術館でも、隣の県立図書館との共同企画など、地域連携を模索中だ。
幹事役の伊藤匡(きょう)・学芸課長は「福島の街づくりにも、きっと役立つヒントがある。商工会議所や行政の方たちにも聴きに来てほしい」と話している。入場無料。
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