◇法の限界 胸中複雑◇
川口市の園児死傷事故で、業務上過失致死傷罪に問われた井沢英行被告(38)に対し、検察側は同罪の法定刑の上限である懲役5年を求刑した。結果の重大性などから「二度と悲惨な事故を起こさないためにも、最高刑以外はあり得ない」とする検察側に対し、弁護側は最終弁論で「過失の程度は常軌を逸したものとまでは言えない」と主張、慎重な量刑判断を求めた。判決は3月16日に言い渡される予定。
◇「危険運転罪に課題」 遺族、検察の量刑は評価◇
「業務上過失致死傷罪が想定する事案としては、最も悪質で重大な類型に該当する」。検察側は論告で、井沢被告がこれまでも常習的に脇見運転などの危険な運転をしていたことを指摘。「事故の過失は偶発的事情によるものではなく、故意に近い」とした。検察官が、事故直後の悲惨な現場の様子や、死亡した園児の遺族の思い、重傷を負った園児のけがの内容を読み上げると、傍聴席のあちこちから、すすり上げる声が漏れた。耐えきれず嗚咽(お・えつ)する遺族もいた。井沢被告は終始顔をゆがめ、うつむき加減で聴き入った。
井沢被告は最後に発言の機会が与えられると「このような事故を起こして言葉に言い表せない申し訳ない気持ちでいっぱい」と話し、傍聴席に向き直って土下座した。
公判後、死亡した福地悠月(ゆ・づき)ちゃん(当時5)の父禎明(よし・あき)さん(37)は、盛山陽南(ひ・な)子ちゃん(当時3)の父哲志さん(26)とともに報道陣の取材に応え「懲役5年が法律の限界とすれば、精いっぱいやってくれた」と検察側の求刑を評価した。
また、約21万人分の署名を集めて求めてきた危険運転致死傷罪が適用されなかったことについては、「むなしく残念。あれほど悪質、危険な運転でも業務上過失致死傷罪にしか問えないということを全国に知らしめた」と話し、現行法の課題を改めて指摘した。
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