【仕込み過程低温維持が大変】
【温度1度の差味に影響 製氷機導入も】
今冬の平均気温は例年より2度前後も高く、冬の寒さが味を決める日本酒造りは、温度の管理に手を焼いたようだ。仕込みの過程で低温を保つ必要があるため、製氷機を導入するなど対策に追われた酒蔵もあった。
創業200年近い喜多酒造(東近江市池田町)は昨秋、酒の仕込みが始まる前に、水90リットル分の氷が一度にできる製氷機を蔵の中に置いた。
タンクの中で酵母を発酵させる過程では、低温を維持しなければならない。高温だと酵母が作用しすぎて、思った通りの味が出なくなるからだ。人気の大吟醸酒は温度が1度違うだけで味が台なしになることもあり、蔵元と杜氏(とうじ)らが話し合って導入を決めた。
仕込み作業を始める時間も2時間以上早めた。午前5時過ぎに作業を始め、気温が上がる日の出前には終わらせる。「いい酒をつくるため、妥協はできない」と同酒造の喜多良道社長(53)。将来は蔵全体を冷やす空冷機の導入も考えているが、小さな酒蔵には馬鹿にならない出費という。
一方、酵母の発酵過程で用いるタンクの一部を3年前から木製に切り替えた上原酒造(高島市新旭町太田)では、暖冬の影響はほとんどなかったという。木は鉄に比べると外気の影響を受けにくく、温度を一定に保ちやすい。「結果論ですが、伝統は奥深いですね」と杜氏の山根弘さん(70)は話す。
県酒造組合によると、県内の酒蔵数は約50。ほとんどは地元密着の小規模で、室温をコンピューター制御する設備の導入は難しいという。同組合の福井弥平会長(67)は「小さな蔵では、新たな設備投資は経営に直接響いてしまう」と話す。
彦根地方気象台によると、3月並みの陽気だった日は2月に大津で19日、彦根で22日あった。彦根の平均気温は昨年1月が3.0度、2月が3.9度。今年はそれぞれ5.1度、6.1度と2度以上高かった。
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