大阪市西成区・あいりん地区の釜ヶ崎解放会館などに大量の住民登録が行われていた問題を巡り、市が住民登録を抹消するのは違法だとして、男性(34)が抹消処分差し止めを求めた仮処分の抗告審で、大阪高裁の横田勝年裁判長は1日、申し立てを却下した1審・大阪地裁決定を取り消し、男性が起こしている同処分の差し止め訴訟の判決が確定するまで住民登録を抹消しないよう市側に命じた。
市議選を控える市は、「抹消しないと選挙が無効になる」と訴えていたが、横田裁判長は、同会館を男性の「住所」とみる余地があるとして、「選挙無効の恐れはない」とした。
決定などによると、男性は2004年11月、同会館に住民票を置いたが、昨年12月、同会館など3か所に3600人以上が住民登録していた問題が発覚。市は「住んでいないと知りながら投票を認めれば、選挙が無効になる」として、今月2日に登録抹消することを決めた。
男性は先月、「選挙に参加できない」などとして提訴し、仮処分も申し立てたが、1審決定は「住民登録に実態がない」として男性の主張を退けていた。
横田裁判長は、男性の住所は同会館近くの簡易宿泊所と認定。ただ、問題解決に向け、市が簡易宿泊所業者の組合と居住実態を明らかにするルールづくりを進めている途中であることから、「調整がまとまり、男性らに周知されるまでは同会館を住所とみる余地も十分ある」と指摘。簡易宿泊所での住民登録が支障なく行われる保証がない現状で、市が住民登録を抹消するのは信義則違反——と判断。
市は、男性については、2日に登録抹消しないとし、他の住民登録者は「2日に対応を決める」と述べた。