菅総務相は28日、放送法改正案の取りまとめを担当する放送政策課の南俊行課長を、1日付で、電気通信事業紛争処理委員会事務局の吉田真人参事官と交代させる人事を発令した。
菅総務相は記者団に「NHK改革を加速させるため、新しい視点でやる必要がある。適材適所だ」と述べ、自ら主導した人事であることを示唆した。閣僚が課長人事に直接介入することや、法案提出直前に担当課長が交代することは極めて異例で、「南課長の更迭」との見方が強まっている。
南課長は2005年8月に就任し、竹中前総務相の私的懇談会などで、通信放送改革の取りまとめを担当してきた。
菅総務相は今国会で放送法を改正し、NHKの受信料支払いを08年度に義務化する一方、2割前後の値下げをNHKに求めているが、NHK側は抵抗している。菅総務相はNHKの対応と担当課の責任問題は「全く関係ない」としたが、「調整力不足」へのいらだちも背景にありそうだ。
閣僚が省庁人事に「介入」した事例としては、1993年12月、当時の通産省で、次期次官就任が確実視されていた産業政策局長が、大臣の辞任勧告によって退任した。科学技術庁では94年12月、田中真紀子長官と対立した官房長が事実上、更迭された。総務省では05年5月、郵政民営化に非協力的だと判断した小泉前首相の意向を受け、総務審議官と郵政行政局長が事実上、更迭された例がある。