先月アメリカ・ラスベガスで開かれた国際家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(以下、CES)。目玉は、新OSウィンドウズビスタだったが、一方で液晶とプラズマ方式で激突する大画面テレビ、規格争いでしのぎを削る次世代DVDも、大きな関心を集めた。
40周年を迎えた今回のCES。近年のデジタル家電市場の盛り上がりを反映して、世界から過去最多の約2700社が参加。2万点以上の最先端の製品が出品された。
約55万平方メートルの広大な会場で目についたのが、薄型テレビの「フルHD(ハイビジョン)」対応をうたいあげるキャッチフレーズだった。
HDは垂直方向が650画素以上の映像。フルHDはHDよりも解像度が高い垂直1080画素・水平1920画素の映像で、対応ディスプレーは地上デジタル放送や次世代DVDソフトの高細密な映像をそのまま映せる。
北米では2009年からテレビ放送の完全デジタル化が始まり、次世代DVDの普及が見込まれることもあって、各社の「HD」と「フルHD」商品の大合唱を生んだ。
目立ったフルHD対応大画面テレビは、プラズマと液晶が対立する構図だ。プラズマ陣営の雄、松下電器産業は開幕前日の記者会見で、「映画やスポーツを最高の画質で楽しむには動画の解像度が優れているプラズマが最適」(パナソニック・ノースアメリカ社長、山田喜彦さん)と優位性をアピール。50〜103インチのサイズでフルHD製品を販売していくことを発表した。
一方、液晶テレビで国内シェアトップのシャープは、世界最大となる108インチの液晶テレビを公開し度肝を抜いた。大画面化はプラズマに有利で液晶には難しいとされてきたが、「(液晶で)この大きさの製品まで開発できることを示せた」とプラズマ陣営への対抗意識をむき出しにした。今年夏ごろの製品化を目指しており、32〜108インチのサイズでフルHD化を進める。
フルHD化の波は、液晶、プラズマ方式以外のテレビにも押し寄せている。セイコーエプソンがメディア向けに自社展示したのが、同社製の液晶パネルを使ったリアプロジェクション方式のテレビ。フルHDに対応した製品は数年前に登場していたが、部品の液晶パネルをより小型化することで製造コストを引き下げ、液晶・プラズマ方式テレビとの価格競争に備える。
2規格対応のDVD再生機も一方、次世代DVDを巡る規格争いでは新展開が見られた。「HD DVD」陣営の盟主・東芝が、記録層を3層にすることで、従来の最大記録容量の30GBを上回る、51GBのHD DVD|ROMを開発したことを発表したのだ。ソニー、松下電器産業などが推進する「ブルーレイ・ディスク」(BD)規格の最大記録容量50GB(2層)より、1GB多い。BD陣営は大容量の優位性を強調してきただけに、「低コスト+大容量」をアピールするHD DVD陣営との規格争いは決着が見えなくなった。
両陣営の規格争いは、次世代DVD再生機の売り上げ不振を招いている。消費者が規格の優劣を見極めているためだ。解決策として韓国LG電子が今回発表したのが、HD DVD、BDの両規格に世界で初めて対応した再生機だ。単一規格の再生機よりも価格は割高になるものの、規格決着までのつなぎとして他メーカーが追随するかが、注目される。
パソコン、デジタル家電の動向を占う新製品が続々と登場したCES。ゲイリー・シャピロCES会長の開幕の言葉「さまざまな分野でのデジタル革命」が、はっきりと見えてくることは間違いないだろう。(林 宗治・編集部/2007年2月24日発売「YOMIURI PC」2007年4月号から)