記事登録
2007年03月01日(木) 00時00分

テレビにつなぐPC登場、大画面でネット動画も読売新聞

フルHDテレビやビスタが追い風、AV機能前面にリビング進出を狙う

FMV TEO(TEO50U/D) 富士通http://www.fmworld.net/
Tel:0120-719-242 実勢価格:18万円前後
AVラックに納まる横長のケースを採用。デジタル放送チューナーを内蔵、録画もできる

 ソニーと富士通が大画面テレビにつなぐパソコンを発売した。家庭向けパソコンにとってリビング進出は緊急の課題。既にリビングに鎮座している大画面テレビを進出の足掛かりにしようというわけだ。「大画面テレビでネット」というメーカーの用途提案は、ユーザーのニーズへと昇華するだろうか。

 大画面テレビが売れている。電子情報技術産業協会の調べによると、昨年11月に出荷された30型以上の液晶テレビは前年同月比68・4%増の35万2000台、プラズマテレビも同44・2%増の9万9000台。まさに絶好調だ。低価格化も急速に進んでおり、年末商戦では1インチ当たり5000円台という特価品も飛び出した。この急速に普及する大画面テレビをパソコンのディスプレーとして乗っ取ってしまおうというパソコンが、ソニーの「TP1」と富士通の「FMV TEO」だ。

 両機ともデジタル放送チューナーを搭載し、ハイビジョン放送の録画・再生が可能。ワイヤレスキーボードとリモコンを備え、ネットで配信されている動画コンテンツをリモコンだけでも楽しめるようなメニューも用意している。DLNAにも対応し、例えば書斎のパソコンに保存してある動画や写真をLAN経由で取り出し、大画面テレビに映せる。ノート用CPUを採用し、リビングの静寂を保て、外観もオーディオ機器風だ。インターネット接続用には無線LAN子機を内蔵、テレビとはHDMIケーブル1本でつながるので配線の手間も最小限だ。HDMIは主に家電、AV機器同士の接続に使われる規格で映像と音声を1本のケーブルでやり取りできる。

AV機能はPCの生命線

 実は家庭向けパソコンにとって、AV機能はもはや生命線ともいえる機能になっている。AV機能なしには製品の特徴も出せないし、価格維持も難しい。用途提案、というよりも、生き残りのためにも、消費者がAV機能に価値を見いだしてもらわないと困るのだ。AV機能をアピールするのにリビングの大画面テレビは絶好の舞台だ。昨夏、シャープと富士通が発売した37型ディスプレー一体型パソコンが好評を博したが、次は、既にリビングに鎮座している大画面テレビを進出の足掛かりにしようというわけだ。

 過去にもテレビにつないで使うパソコンはあったが、いずれも失敗に終わっている。しかし、今度こそはと思わせる状況の変化もある。テレビは大きくなっただけでなくデジタル化し、解像度等で性能を語られるようになり、現在、WXGA(1366×768ドット)から、フルHD(1920×1080ドット)へと主流が移りつつある。一般的なパソコン用ディスプレーは20型ワイドで1680×1050ドットだ。37型WXGAの大画面テレビでパソコン画面を表示すると、文字などがかなり大きくなってしまうが、フルHD解像度ならさほど違和感はない。リモコンでAV機能を操るための操作画面、メディアセンターを持つビスタの登場も追い風だ。

 気になる点もある。テレビとパソコン用ディスプレーでは絵作りが根本的に違う。「同じ液晶パネルを使ったとしても、自然画、動画を美しく表示する場合と、文字やウィンドウを見やすく表示する場合では表示回路などはまるで違う」(シャープ)という。テレビメーカーは放送画像の鮮度を競っており、パソコンをつないだ場合のことはあまり考えていない。また、大画面テレビが、フルHDやHDMI端子付きとは限らないし、リビングで見たいネットコンテンツがどれだけ増えるかも未知数だ。ディスプレーなしで20万円前後という価格もやや高めだ。

 両機の発売でリビングPCという新分野が立ち上がるかどうかはわからない。ただ、一部のパソコンユーザーは30型以上の大型ディスプレーに飛びついている。彼らが大画面テレビに触手を伸ばすことは想像に難くない。テレビにパソコンをつなぐ使い方は、リビング以外の意外なところで普及するのかもしれない。(南部健司・フリーライター/2007年2月24日発売「YOMIURI PC」2007年4月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20070228nt09.htm