戦争の悲惨さを描いた映画「硫黄島からの手紙」は米国でヒット中。高い評価を得ている。ここで問題。映画館に行き、この映画を十六歳の高校生だけで見られるか? 答えは「ノー」。
同映画は米国映画協会(MPAA)が定めた年齢制限区分で「R指定」になっており十七歳未満は親か大人の同伴者がいないと映画館に入ることは認められていない。「硫黄島からの…」は「戦争の暴力が描かれている」(MPAA)のが「R指定」理由。日本では同映画に年齢制限はなく米国の方が厳しい印象だ。
年齢制限区分はMPAAと映画館組合が一九六八年に導入。ポルノ映画が台頭した時期で政府からの規制を回避するため映画業界が自主的に設定した。
現在、性的描写や暴力、麻薬使用シーンの有無などによって定められた年齢制限の指定区分は五つ。具体的には、(1)年齢制限なく、誰でも見られる「G」(2)親の同伴が望ましい「PG」(3)十三歳未満について親の同伴が求められる「PG13」(4)十七歳未満は親などの同伴者なしでは入場できない「R」(5)十七歳以下は入場できない「NC17」−に分けられている。
子ども向けアニメなどを除き、ほとんどの作品に「PG」以上の指定が付いているのが実態で日本アニメ「もののけ姫」も「暴力・残酷シーンがある」として「PG13指定」だ。
ただ、こうした年齢制限はあくまで映画業界の自主規制で法的強制力はない。基本的に守られているが、ある米国男性は子ども時代を振り返り「窓口の担当者によっては入場に目をつぶってくれた」という。
性描写にはうるさいが暴力には寛大だとして、指定の決め方があいまいとの批判も。制作者側の中には「G指定」だと子ども向けと見られて興行的に損だとして、「R指定」を意図的に狙う向きもある。
(ワシントン・小栗康之、写真も)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/nwt/20070228/ftu_____nwt_____000.shtml