プロジェクトを実施したのは、青森放送、中国放送、テレビ長崎の三局。公募で集められた中高生計四十四人が、それぞれの地元のテレビ局でスタッフや学校関係者らの協力を得ながら番組制作を体験した。
実施期間は、テレビ長崎は五日間、青森放送が四カ月、中国放送が八カ月。二〇〇五年に東大大学院情報学環メルプロジェクトと共同で編集・刊行した「メディアリテラシーの道具箱〜テレビを見る・つくる・読む」をテキストに、それぞれ三分間程度の番組を制作した。地元の高校生バンドに密着したり(青森放送)、プロ野球の球団を取り上げたり(中国放送)、開催された「長崎さるく博」を追ったりと、バラエティーに富んだ内容となった。
報告会では、三局の担当者が中高生の取り組みぶりや作品を紹介した。民放連メディアリテラシー実践プロジェクト・チーム委員の駒谷真美さん(昭和女子大専任講師)によると、参加した中高生の九割以上が番組作りについて「難しかったけど楽しかった」としたほか、▽参加して初めて作る立場が分かった。普段テレビを見ていて、この企画はどうやって、どんな理由でやっているんだろうと思うようになった▽ただ漠然と見るのではなく、構成や制作者の意図を感じるようになった▽カメラマン、ディレクターが何を考えてこの絵を取っているのか考えるようになった−などの感想が聞かれたという。
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民放連が青少年のメディアリテラシー向上に取り組み始めたのは、少年非行へのドラマの影響が取りざたされた一九九九年度から。中高生の番組制作体験は〇一年と翌〇二年にも試みているが、参加者を公募して行う本格的なプロジェクトとしては今回が初めてだ。
初回の成果について、民放連の担当者は「テレビの向こう側に(番組を)作っている人がたくさんいることを十分に知ることができたと思う。作り手が介在して編集などが施されているものを、視聴者が見ているんだと理解してもらえた」と話す。
ただ、テレビ局側の担当者からは「メディアを批判的に読み解くワークショップをやりたかったが、時間が足りず実施できなかった。作り手によってその事実がちょっと変わったように伝わることもあり得る、ということを教える機会がなかった」などの反省の弁も聞かれた。プロジェクトは来年度以降も続ける予定という。
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報告会では「あるある」問題とメディアリテラシーを関連づける発言もいくつか聞かれた。
「情報の送り手(番組制作サイド)もメディアリテラシーを学ぶべき」と訴えたのは、同プロジェクト・チーム副主査を務めた水越伸さん(東大大学院情報学環助教授)。さらに「テレビ局にとって大事なのは他者。他者に向かって番組を作っているというマスコミュニケーションに注目し、相手(視聴者)を参加させた形の研修プログラムを組んでもいいのではないか」との提案も。
中国放送の三宅恭次取締役は「全国の民放が下請け(制作会社)を使っているが、チェックできていないと思う。捏造問題が民放界を揺るがせている今、メディアリテラシーに取り組むことが、民放の存在意義を示すことになる」と語った。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/hog/20070228/mng_____hog_____000.shtml