川崎市高津区の緑ケ丘霊園でステンレス製の線香皿が大量に盗まれた事件。夜間でも出入り自由な墓地は多く、墓地や寺院の関係者にとってもひとごとではない。4カ所の墓地を横浜市の担当者は「見回りの回数を増やすぐらいしか……」と漏らしている。
(佐藤善一、佐藤正典)
事件があった川崎市緑ケ丘霊園には、不法投棄を監視するカメラが2カ所に設置されている。川崎市環境局緑政部の川島修霊園事務所長(59)は「お墓というのは先祖の霊をまつる場所。それにもかかわらず、線香皿を盗むというのは人間の霊そのものに対する侮辱。非常に悲しいことで理解しがたい」と話していた。
横浜市には市営墓地が4カ所ある。環境施設課によると、各墓地には管理事務所があり、平日の昼間などは定期的に見回っているが、中区の根岸外国人墓地を除いて施錠はなく、夜間でも自由に出入りできるという。
最も広い港南区の日野公園墓地は9万3千平方メートルの敷地内に市道も走る。西区の久保山墓地(1万平方メートル)は市街地に近く、敷地内の道は抜け道になっている。担当者は「生活空間になっている部分もあり、施錠して閉め切るのは難しい」と対応に苦慮している。
石原裕次郎ら著名人の墓が多い曹洞宗の総持寺(横浜市鶴見区)は「開かれた禅苑(ぜんえん)」をうたい、境内の参拝は誰でも自由。夜間の施錠もない。
境内にはひとけの少ない所もあり、日中は警備員が定期的に見回っているという。境内を散歩したり抜け道に使ったりする住民もおり、横浜市と同じく「施錠は難しい」という。
鎌倉市十二所の鎌倉霊園は、防犯のため、夕方から朝まで出入り口を施錠している。
ある寺院関係者は「いくら高価といっても墓石を盗む人はほとんどいない。これまで盗難対策に気を使ったことはあまりなかった」と言った。
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