横浜市職員が市のホームページに上司を名指しした脅迫文を書き込み、脅迫容疑で逮捕された。北海道では面と向かって上司批判をした部下が降格処分を受けるなど、部下と上司のトラブルが相次いでいる。いやな上司はどこでもいるものだが、脅迫は行き過ぎ。では、部下にとって“抵抗策”はあるのか。
「ぶっ殺す」「自宅に放火する」。インターネット喫茶から脅迫文を横浜市HPに書き込んで逮捕されたのは、同市職員(31)。加賀町署によると、容疑者は2005年4月から被害者の上司のもとに配属されたが、「自分の先輩が怒鳴られ、職場の雰囲気が悪くなるのが嫌だった」と供述しているという。
北海道滝川市では、酒の席で上司に「アンタは世間からどうにもならんやつだと言われている」「おまえなんか理事を辞めろ!」と暴言を吐いた同市の総務担当部長(58)に、4階級降格の処分が下った。男性は処分について司法判断を求めたが、札幌高裁は男性の請求を棄却した。
両者のトラブルの根底に「共同体意識」の変化があると指摘するのは、『困った上司 はた迷惑な部下 組織にはびこるパーソナリティー障害』の著書がある臨床心理士の矢幡洋氏。矢幡氏は「かつては“この会社で一生やっていく”という前提があり共同体意識が強かったが、今は崩壊しつつある」と話す。
ひと昔前は、「多少の理不尽は耐える」「社員同士の問題も事を荒立てない」−という“不文律”が会社にはあったという。
「今は社員のどこかに、“いつ辞めてもいい”という意識がある。良くも悪くも個人主義の時代になり、会社に人間的なコミュニケーションを求めること自体、ダサいと感じる人が増えている」
一方、企業のメンタルヘルス対策に取り組む「ライフバランスマネジメント」の渡部卓社長は、トラブルの舞台が“市役所”であることに着目する。「市役所などの公共団体は職場環境が悪く、社員のモチベーションが低い。管理職に魅力も感じず、昇進試験を受けない人も多い」と指摘する。
それでも脅迫は犯罪。暴言だって名誉棄損になりうる。矢幡氏は上司への怒りが爆発しそうになった際の2つの対処法を推奨する。
「1つめは『消極的抵抗』です。腹が立ったという態度を見せ付けて、相手に見咎められない程度にサボる。これは米企業でも取り入れられている方法ですね」
そして、2つめは会議などであえて相手の足を引っ張ること。「嫌いな上司や社員の提案や企画が通りそうなとき、揚げ足を取る。あくまで企画をブラッシュアップするためというスタンスを装いつつ、あれこれイチャモンつけるわけです。ただし、これは高等なウサ晴らし」。
懇親会や社内行事がますます減りつつあるなか、上司とのコミュニケーションは希薄になるばかり。やはり不満をぶちまけたいときは、いい酒をいい友と酌み交わすことに限るか。
ZAKZAK 2007/02/27