各種学校扱いで国庫補助を受けられない朝鮮学校は、家族ぐるみの支援でやっと運営されている。そんな現実を知ってもらおうと、東京都立川市の「西東京朝鮮第一初中級学校」が初の公開シンポジウムを開いた。北朝鮮による拉致や核実験などが報じられ、学校を取り巻く状況が一層厳しさを増していることから企画された。(須藤龍也)
「ウリハッキョ(私たちの学校)」——学校運営を支える父母たちは、子どもが通う学校をそう呼ぶ。
母親たちでつくる「オモニ会」は、資金面での大きな支えになっている。会長の韓錦女(ハンクムニョ)さんは「リサイクル品をバザーで売る。チヂミを焼いて売る。少しのお金を得て、子どもたちに必要な物を買ってあげたい」と話す。
弁当しかない学校で子どもたちに温かい給食を作る。バザーやイベントで朝鮮学校を知ってもらう冊子を配るのも、大事な活動の一つだ。
父親の「アボジ会」は2カ月に1回、学校設備の保守や修繕を手伝うのが役割だ。昨年末は学校の机といすを皆で修理した。備品の再塗装、どぶ掃除と、なんでもこなす。
昨年から作業後に45分間の勉強会を始めた。資金不足の背景や、学校を取り巻く環境について学ぶ。その後、校庭で焼き肉を囲んだお楽しみの懇親会へ——。
アボジ会の会長、任忠先(イムチュンソン)さんは「わたしは卒業生で子どもたちも通う。学校は自分たちの家という感じだ。ならば修理も勉強もやるのが当然だろうという思いです」と語る。
朝鮮学校が国庫補助を受けられない理由として、独自の民族教育を採り入れたカリキュラムが日本の学校と認められず、「各種学校」扱いになっていることがある。
文部科学省によると、公立小学校への公費負担は児童1人当たり約90万円(04年度)。そうした補助のない西東京朝鮮第一初中級学校は月謝と寄付金が頼り。運営費は1人当たり約35万円と、公費負担分の半額にも及ばない。
同校では年間必要な経費を約2億5300万円と試算するが、今年度の予算は約7400万円しかない。都や市区町から独自に合わせて約510万円の助成を受けているが、資金不足の解消には遠い。
10日のシンポジウムでは、02年9月の日朝首脳会談で北朝鮮が拉致を認めたのをきっかけに、助成金支出の方針が即座に撤回されたという自治体の例も報告された。
同校の慎基成(シンキソン)校長は「日本で生まれ育ち、定住する在日の子どもたちが、初めて朝鮮の言葉や文化を学ぶ場所が朝鮮学校になっている。日本の地域の学校として認めて欲しい」と国庫助成に理解を求めた。
http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000000702260003