イラク駐留米軍が23日、イラク東部のイランとの国境で、イラクのシーア派有力与党、イスラム革命最高評議会(SCIRI)の指導者アブドルアジズ・ハキーム師の長男アンマル師を拘束した。何らかの手違いがあったとみられ、アンマル師は半日後に釈放された。米国との協調姿勢を取る実力者の息子の拘束に、米国のカリルザード駐イラク大使は「申し訳ない」と平謝りだ。
ロイター通信などによると、アンマル師はイランからの帰国途中の23日朝、中部ワーシト州の国境から入国した際、米軍に銃をつきつけられたうえ、手錠をかけられて近くの米軍基地に連行された。イラク内務省筋の話では、米兵はアンマル師が頭にしているターバンも取ったという。
米軍側は拘束の理由を明らかにしていないが、アンマル師は釈放後、「私のパスポートが有効期限内にあるにもかかわらず、『期限切れだ』と言われた。手錠をかけられて目隠しをされた。無礼なやり方だった」と語った。
アンマル師の父アブドルアジズ師は、イラク政界の実力者の一人。昨年12月にはブッシュ米大統領と会談している。
シーア派反米強硬派のサドル師派民兵対策や政治面での安定確保などで、米国にはSCIRIの協力が欠かせない。カリルザード大使は「なぜこうなったのかを調査する」と述べ、謝罪した。バグダッドの米国大使館の報道官は「国境は閉鎖されており、兵士らは決められた手順に従って行動していた」とコメントした。
これに対し、シーア派聖地ナジャフの地方議会関係者は朝日新聞のイラク人助手に23日、「明日にも、米軍の不道徳な行為に対する大規模な抗議デモを行う」と述べた。