ハマスの攻撃で破壊されたグリーブさん一家の車と自宅=24日、ガザで
ハマスとファタハの抗争では、昨年12月から90人を超す死者が出た。両派は内戦に陥るのを防ぐため、今月上旬にサウジアラビアの仲介で統一政権樹立に合意。その後、抗争は起きていない。
だが、1月4日に自宅をハマス系治安部隊に携帯型ロケット弾などで攻撃され、中にいた弟のファタハ系治安部隊幹部を殺されたスブヒ・グリーブさん(48)は「血には血で仕返しするしかない」と叫んだ。
パレスチナ自治政府のハニヤ首相(ハマス)から、破壊された自宅を100万ドル(約1億2000万円)で自治政府が買い取ると提案されたが、拒否したという。「ハマスに人殺しの証拠を隠滅させないためだ」と語った。
1月25日にハマス系治安部隊員だった弟が、路肩に埋められていた爆弾で死亡したという兄のフサム・ムティールさん(30)も「(ファタハに対する)報復はあり得る」と述べた。
自治政府の内務省で抗争の和解に取り組むジハード・アブイーダ局長は「イスラエルという外の敵に対する闘いはあっても、パレスチナの中の政治勢力同士の武力衝突は今までなかった。ガザの住民は、和解ができるのかと不安な気持ちでいっぱいだ」と語った。
局長はさらに、ガザで約10ある氏族同士の抗争も悪化していることを明らかにした。各氏族は1万人以上の親類縁者からなる。内務省のまとめによると、抗争は別の自治区のヨルダン川西岸もあわせて、02年の840件から昨年は8556件と4年で10倍に増えた。
土地や建設事業などをめぐる利権争いが主な理由で、ハマス内閣がイスラエルの存在を認めないために始まった欧米の経済制裁などの影響で利権の分け前が減り、争いは深刻化しているという。
今月24日にはガザ南部で氏族間抗争が起き、銃撃で計4人が死亡した。
ガザの臨床心理学者アンワル・ワディさんは「今のパレスチナは事実上の無政府、無法状態だ。弱い立場の庶民は、ファタハかハマスか、あるいは武器をたくさん持つ有力氏族に頼るしかない」と指摘した。