都道府県と政令指定都市、県庁所在市、東京23区の計119自治体を対象に文書と電話で質問し、すべての自治体から回答を得た。
口利きの記録制度は01年度に佐賀市が始め、02年度に鳥取県など4自治体が導入。その後、03年度に10、04年度に5、05年度に2、06年度に9自治体が設け、計31自治体となった。このうち、新潟、神戸、長崎の3市と新宿区は条例で、残りは要領や規則などで定めていた。半数の17団体は贈収賄や入札妨害事件、職員による不祥事などをきっかけに導入したと答えた。
神戸市は06年から、契約行為に関連したものに限って記録を始めたが、市議のあっせん収賄事件を受け、要望などを含め、原則すべてを記録する条例を07年1月に施行した。
過去の記録件数を回答した25自治体をみると、06年度(昨年12月現在)に最も多かったのは横浜市の67件で、長野県40件、鳥取県32件、佐賀市22件と続く。制度導入後に記録件数が減少した自治体は多く、熊本市は03年度の264件が06年度は6件に、佐賀市は02年度の200件が06年度は22件に減った。
一方で、神奈川県や京都府、福井市など計15自治体は06年度の記録件数がゼロ。このうち宮城、徳島両県や福岡、岐阜、静岡、長崎、大分市などは制度導入以降、ずっとゼロが続いている。
記録の対象になる行為は、自治体によって基準が異なる。建設的な提案や要望も含め記録する自治体は多いが、「不当な働きかけ」「強要する行為」などに限っている自治体も12あり、これらの自治体が回答した記録件数はすべてゼロだった。
これまでの記録内容を見ると、例えば佐賀市では「議員の知人が市営住宅へ入居できるよう要望」「建設工事の仕事依頼、斡旋(あっせん)」「特定業者について、指名に入れるよう書類を持参して依頼」などがあった。全体的には、道路整備などの地域の要望や問い合わせがほとんどだった。
導入の効果として、「口利きが大幅に減った」(福井市)、「議員らの姿勢が要求型から問い合わせ型に変わった」(横浜市)などの変化を挙げた自治体もあったが、02年の制度導入以降、記録ゼロが続く宮城県の担当者が「(不当な)働きかけと意見、苦情との区別の判断に迷うとの問い合わせがある」と答えるなど、課題も少なくない。熊本市は「開始直後に比べ件数が減った。制度の趣旨を踏まえた適正な対応が必要」とした。
03年度の37件が05年度は3件に減った高知県では1月、橋本大二郎知事が「この程度ならと公表しない事例があるのではないか。でなければこんなに急激に減らない。もう一度真剣に取り組んでほしい」と職員に呼びかけている。