2007年02月25日(日) 08時32分
390万人の「仮想空間」上陸 米セカンドライフ、4月にも日本語版(フジサンケイ ビジネスアイ)
■支援ビジネス相次ぐ
さまざまな店舗、大学、美術館、リゾート施設、カジノや宇宙センターなどが並ぶ巨大仮想空間「Second Life(セカンドライフ)」が、4月にも日本語版サービスを始める。世界の390万人以上が住民登録しているセカンドライフの日本上陸とあって、広告会社やIT(情報技術)各社が、この中での企業支援ビジネスに乗り出すなど、動きがあわただしくなってきた。
セカンドライフの世界には、インターネットにつながったパソコンから入れる。住民登録後に専用ソフトをダウンロードし、まずは自分のアバター(分身)をつくる。名前や姿を決めれば、その中の街を自由に散策できる。
街にはさまざまなアバターが歩き回り、互いに会話することができる。公用語は英語だが、4月以降は日本語での会話が一部を除き可能になる。日本語による操作手順の説明なども充実する予定だ。
≪自分でモノづくり≫
これまでもネット上の仮想空間サイトはあったが、セカンドライフには2つの大きな特徴がある。
まずは、自分でさまざまなモノがつくれること。楽器、家具、衣料、雑貨、慣れてくれば建物やクルマまで、用意された制作ツールで“魔法”のように形に仕上げられる。しかも、その著作権は、つくった人だけのものになる。
もう一つのポイントは、「リンデンドル」と呼ばれる仮想通貨が流通し、それを実際の米ドルに換金できることだ。つまり、自分でつくった服や家を売れば、最終的には現金収入が得られる。不動産売買で昨年、日本円にして1億円近く稼いだ例もあるという。
レートは日々変化し、22日は1ドル=約268リンデンドル。“発展途上”なので物価はかなり安いが、それでも現在、約15億リンデンドル以上が仮想世界の中で流通している。
セカンドライフは2003年、米国ベンチャーのリンデンラボ(カリフォルニア州)が立ち上げた。主な収入源は、土地の販売とその管理費。6万5000平方メートルの土地に相当する島を、1675ドル(約20万円)で売っている。これがサーバー1台分にあたり、月額295ドル(約3万5000円)で管理する。購入者は島の土地を区画整理し、住宅付きで分譲してもうけてもいい。
≪クルマ自動販売機≫
米国では、大企業が次々と仮想の土地を手に入れ始めている。米国トヨタは、そこに試乗できる自動車ショールームを開設。日産自動車は、大きなクルマの自動販売機を設置した。通信社のロイターは支局をつくってニュースを配信。さらに60以上の大学が分校を運営している。
国内企業の関心も高まってきた。電通は、アニメなどのクリエーター養成学校を運営するデジタルハリウッドと組み、企業や団体の参入を支援するための研究会を近く設立。複数企業の参加を募ってセミナーなどを開催する予定だ。また、仮想の共同研究所を設け、セカンドライフの中でも企業のサポートを行う。
古本販売のブックオフコーポレーションは店舗を設置。当面は企業PRが主な狙いだが、将来の電子書籍販売などに備える。
また、賃貸マンションのツカサグループは、静岡県伊東市に2009年に着工する予定の永住型テーマパーク「伊豆昭和30年代村」のバーチャル版の建設を準備中だ。ゆったりした生活を求める団塊世代1500人以上の会員を集める計画だが、その暮らしを先行して疑似体験してもらう試みだ。
デジタルハリウッド大学大学院の三淵啓自教授は、「アニメやゲームなどの日本が強いコンテンツ(情報の内容)を、海外に売り込むには絶好の場。しかも、クリエーターがユーザーに作品を直接販売できるようになり、コンテンツの流通形態を変えるかもしれない」と強調する。
また、「(学校にも行かず求職活動もしない)ニートや引きこもりが、セカンドライフ内で職をみつけ、実際には自宅にいながら働けるかもしれない」。さらに、「人が移動するにはエネルギーが必要。この中で会議をしたり、旅行に行けば、地球全体の省エネにもつながる」と続ける。
ただ、著作権などの法的問題、急速にユーザーが増加した場合の不安、日本人にとっては英語とコミュニケーションは苦手などの課題も少なくない。
セカンドライフの日本人ユーザーは、まだ2万人未満。日本語版の登場で、日本からの参加者が一気に増えるかどうか。400万人近い仮想社会の住民とともに見守ることになる。(森万抄雄)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070225-00000000-fsi-bus_all