鈴木さんは専門誌記者を経て、五十代後半から本格的に写真家として活動している。フィリピン残留孤児問題や中国人強制連行問題など、アジア諸国の取材を中心に重ねてきた。「戦争の後始末がされていない問題」をテーマにしてきた。
一九四五年三月十日、一夜にして十万人が死亡した東京大空襲。その被害を追うきっかけは被害者の集団訴訟の準備を報道で知ったことだった。
二〇〇五年夏から昨年末にかけて、東京大空襲で障害を負った人や、親を亡くした遺族ら五十二人を訪ねた。腕を失った傷口や機銃掃射を浴びて裂かれた足の肉の傷、普段はカツラで隠しているやけどのただれ…。今なお苦しむ被害者の実態をフィルムに収めた。焼け残った浅草寺境内の大イチョウなど、街に残る傷跡も写した。
「国内にも終わっていない戦後があった。軍民差別、公的な慰霊施設さえない実態」。鈴木さんは取材の中であらためて問題を痛感したという。「一人一人の話がブックレット一冊になるような苦しみを背負っている。障害のある人だけでなく戦災孤児となった人にも、親類をたらい回しにされるなど大変な苦労があった」
写真展では二十五日午後二時から四時まで、鈴木さんと被害者による談話会もある。入場無料。
また、鈴木さんは三月十日、今回の取材をまとめた書籍(高文研)を出版する予定。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tko/20070225/lcl_____tko_____000.shtml