高座後の記者会見で引退を表明する三遊亭円楽さん=25日、東京都千代田区の国立演芸場で
引退を表明する三遊亭円楽さん=25日、東京の国立演芸場で
落語「芝浜」を演じる三遊亭円楽さん。この後に引退を表明した=25日午後、東京都千代田区の国立演芸場で
口演後に会見した円楽さんは開口一番、「だめですね」。約30分の予定が40分余りに長引いた「芝浜」を「ろれつが回らなくて、声の大小、抑揚がうまくいかず、噺(はなし)のニュアンスが伝わらない」と総括。「3カ月けいこしてきて、これですから。今日が引退する日ですかね」と話した。
会見では、評論家から引退の再考を促す質問も出たが、円楽さんは「黙って去っていく形が、自然かもしれません。お客さんは『まだまだできる』と言って下さると思いますが、それに甘えてたんじゃ、あたし自身が許さないんです」ときっぱりと語った。
円楽さんは現在、週3回の人工透析を続けている。今後、高座にあがることはないが、「弟子の会などに対談者としてゲスト出演する可能性はある」という。
円楽さんは東京・浅草出身で、55年に六代目三遊亭円生に入門。29歳で真打ちに昇進するなど早くから頭角を現した。「笑点」には66年の放送開始と同時にレギュラーで出演。83年から05年に倒れるまで断続的に司会も務め、人気を集めた。06年5月放送の40周年番組でも司会をした。
また、78年に師匠円生が落語協会を脱退した際、それに連なり、師匠の死後も円楽一門として弟子たちを率いている。
八代目桂文楽が71年、噺の途中で絶句し、「勉強し直して参ります」と言って高座を降り、二度と復帰しなかった例はあるが、高座の出来への不満から直後に引退表明したケースは極めて異例。
〈「笑点」の司会を引き継いだ落語芸術協会長の桂歌丸さん(70)の話〉 師匠・三遊亭円生譲りの噺(はなし)を数多く持っている人だし、お弟子さんも多いし、まだ我々のお手本でいてもらわなくちゃならない人なんだ。引退なんてとんでもない。もったいない。宝物を捨てるようなもんだ。ただ、引き留めるとよけいに反発するでしょう。頑固で強情な人だから。きっちりとしゃべりたいという美学もいいが、完全主義も時と場合によります。失敗しても次にうまくできればいいんだ。「ろれつが回らないのが情けない」って言うけれど、治ると思えば治るんだ。今度会ったら、怒ってやりますよ。
〈上方落語協会長の桂三枝さん(63)の話〉 昨年末に雑誌で対談したときはお元気だったので、驚き、さみしい思いがする。円楽師匠は若いときからかっこいい落語家だった。芸人は死ぬまで現役というイメージがあるなかで、引き際の潔さを教えてくれた気がする。かつて弟子のために寄席を作ったように、常に落語界を考えておられた。今後は演者としてでなく、指導者として我々にアドバイスをしてください。お疲れ様でした。
http://www.asahi.com/culture/stage/rakugo/TKY200702250205.html