定時制高校を卒業した八千代市の佐藤真一さんが05年9月、22歳で急逝した。1年後、級友が母の真紀子さん(56)を訪ね、真一さんとの思い出をつづった42枚の手紙を手渡した。「真ちゃんのヒマワリのような笑顔は忘れない。ありがとう」。てんかんと知的障害があった真一さんの楽しく学ぶ姿から同級生や教師が受け取った思いを集め、真紀子さんは追悼文集を出版した。(小沢香)
真一さんは00年、2浪の末に念願の県立行徳高校定時制に合格した。「授業をみんなと一緒にやりたいです。今年こそは受け入れてください」と自筆で申告書を出した。
最初は通学途中の駅で好きな電車を見ていて遅刻が重なり、周囲を心配させた。だが、相手を選ばない満面の笑顔と、黒板を写し終わるまで何時間でも机に向かう懸命な姿が、逆に仕事や闘病など様々な事情を抱えた級友たちを元気づけていった。
「ぼくは真ちゃんのおかげで、そしてこの定時制に来れたおかげで、初めて学校が楽しいと思い、生きるのが素晴らしいと思った」。中学時代は不登校で苦しんだ級友の長野章一さん(22)は書いた。
なかなか終わらないノート写しを半ば強引に手伝い「小さくか細い声で『ありがとう』と言われた」時の救われた気持ち。修学旅行で発作を心配したら本人は大いびきで寝ていてみんなを和ませた話。卒業後は運転免許を取ってドライブに誘うと約束……。約束は果たせなかったが、免許を取ってまず級友たちと真一さんの墓参りをし、真紀子さんに「落ち込んだ日にはこの手紙で元気を取り戻してください」と手紙を届けた。
同校の三尾敬次教諭(49)は「実際には病気でつらい顔をすることも多かった。が、懸命に、しかも楽しそうに学ぶ姿にまわりの生徒は単に『いい人』でなく尊敬の念も持ったのだろう」と振り返る。
三尾教諭は、真一さんにはテストより学習姿勢や提出物を評価して単位修得させようとした。が、「ぼくも点数ほしい!」と迫られた。文章題を課して意見を書く練習を積み、点数に結びつけた。追悼文には「学ぶってどういうことなのか。少なくとも共に学んだ生徒たちは、この問いの重さを十分受け止めてくれたに違いない……私たちにも重い宿題が課せられた」と書いた。
真紀子さんは「親も知らない心の交流があったことに驚いた。学校に行けない人、進学に迷っている人に、高校って純粋にこんなに楽しいんだということを知ってほしい」と話している。文集は自費出版で600円。問い合わせは佐藤さん(047・488・3038)へ。
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