元県議中山信一被告(61)が経営する会社の社員だった女性の自白調書では、選挙前に自宅に集落の住民を集めて開いた「会合」の内容について、酒やつまみなどのメニューや中山被告から渡された現金入りの茶封筒を住民に手渡したことなどが極めて具体的、詳細に描かれていた。
しかし女性は公判で「警察官が無理やり押しつけたストーリーを、検事にもそのまま話した」と自白を翻し、流れは一変した。
弁護人は、百九十一万円に上る買収資金の調達方法や、買収会合で出された料理を注文した仕出し店の存在を検察が立証しておらず、現金が入っていた茶封筒そのものも証拠として提出されていないと指摘。
さらに四回開かれたとされる会合のうち、検察が日時を特定した二回はいずれも中山被告にアリバイがあり「会合はそもそも存在しない」と主張した。
検察側は「アリバイ証人は同級生や支援者ばかり。あえて被告に有利な証言をしている」と苦しい反論をしたが、正面からは切り崩せず、新たな物証も出せなかった。
■「やった」支援者駆け出す
「被告人十二人はいずれも無罪」。鹿児島地裁で二十三日開かれた選挙違反事件の判決公判。裁判長が主文を言い渡すと、法廷は支援者らの「やった」という歓声と大きな拍手に包まれた。判決は自白に頼る捜査手法も厳しく批判。三年半にわたり冤罪(えんざい)を主張し続けた被告の十二人は、裁判長に向かい一斉に深く頭を下げた。
裁判長の「無罪」の声を聞いた傍聴席の家族は、ハンカチで覆った顔をしばらく上げず涙をぬぐった。裁判所前にも約三十人の支援者が集まり、「全員無罪」の紙が掲げられると歓声がわき、万歳が繰り返された。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20070223/eve_____sya_____004.shtml