=前使用者が汚染と主張=
IT関連メーカー「PFU」(本社・かほく市)が所有する羽咋市新保町の工場跡地約1万5千平方メートルの地中で、環境基準を超えるフッ素が検出されていたことがわかった。同社は以前用地を使っていた会社が汚染させたと主張する一方、県と羽咋市にも監督責任があるとして、土壌改良費への応分の負担などを求めて総務省の公害等調整委員会に裁定申請しており、3月2日に第1回審問が開かれる。
同社によると、土地は「PFU南羽咋遊休地」で、91年5月、釉薬(ゆうやく)製造会社「北陸エナメル工業」(87年工場閉鎖、91年解散)から取得。だが、全く使用しないまま他社へ転売する方針を決め、売却に先立ち05年3月に土壌の状況を調べたところ、有害物質のフッ素が計29地点で環境基準値(1リットル当たり0・8ミリグラム)を超す量が検出された。最も多いところでは1リットル当たり440ミリグラムで、基準の550倍に上った。
フッ素は土壌汚染の原因物質の一つで、多量に摂取すれば神経障害や歯・骨の病気につながる恐れがある。ただ、同社や県の調査では、地下水や周辺部の汚染はなく、住民への健康被害の恐れはないとしている。
すでに解散している北陸エナメル工業の関係者とは連絡がとれないため、同社は昨年11月から土壌改良作業を進めているが、経費は相当額に上るとみられる。関係者によると、北陸エナメル工業が操業していた70年代、工場の排煙などにより周辺のブドウ農家から「葉が枯れる」などの苦情が県や市に寄せられ、県や市が改善を要請したという。
こうした経緯からPFUは「排煙による公害が顕在化した後も、工場は廃液を流しており、土壌が汚染された。県と市が指導など十分な対応をしていれば、土壌汚染は続かなかった」と主張。一方、県と市は「土地取引に県や市はかかわっておらず責任はない。あくまで民有地の問題」「当時は土壌のフッ素の環境基準が設定されておらず、排出を規制することはできなかった」などと反論している。
現場は、千里浜海岸に近い羽咋市南端の砂地を利用したスイカやブドウの栽培地が広がる一帯。住民らによると、土壌改良工事開始前の昨秋に地元説明会が3回開かれたが、出席者は少なかった。
この問題に詳しい市内の男性は「一部の住民は『畑は大丈夫だろうか』と非常に心配している。羽咋市は風評被害を言い訳にこの問題を公表していない。事実を隠そうとする体質に怒りを感じる」と指摘する。
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