信書便事業への民間企業参入を促すため、総務省の調査研究会の初会合が開かれた。同省は検討結果を基に参入条件の緩和策をまとめ、早ければ二〇〇八年の通常国会に信書便法改正案を提出する方針だが、これまで民間参入問題は「促進」ではなく「先送り」を印象づける政策決定が続いてきた。
〇三年の信書便法施行で法律上は民間も手紙やはがきなどの取り扱いが可能となった。しかし、全国一律に均一料金で集配するユニバーサルサービスや十万本のポスト設置など、民間にはハードルが高く、事実上日本郵政公社の独占状態にある。
このため、ポスト数にこだわらず宅配便を扱うコンビニなどでの対面引き受けも認める、三年程度かけて段階的に全国展開を進める方法を検討する、を柱とする第一次研究会の報告が昨年六月にまとめられた。
報告を受け、信書便法改正案を今通常国会に提案できるまでにこぎつけたが、民営化後の日本郵政会社の収益を悪化させるとの反発が自民党内で相次ぎ、菅義偉総務相も「民営化をおかしくしてはいけない」として、昨年暮れに提案を見送った。
研究会はわずか二カ月後の再発足であり、改革路線の後退と批判されたためのようだ。息を吹き返しつつある郵政族議員を前に、政府の足元は定まっているとは言い難い。
信書便事業には、はがきや手紙などを集配する一般信書便と、差し出しから三時間以内に配達するといった特定信書便があり、参入条件が比較的緩やかな特定信書便には宅配便業者など二百社が参入している。焦点は参入ゼロの一般信書便だ。
万国郵便連合は加盟国に最低一社の全国一律サービスを義務づけているが、採算性の低い過疎地での集配を日本郵政だけに押しつけるわけにはいくまい。新規参入業者にも一律サービスを支える「基金」へ拠出してもらうなどの工夫が欠かせない。
競争を促して利用者の選択肢を広げ、利便性を向上させることが民間開放の目的だ。
ただ、英国では値下げ競争によって民間に顧客を奪われ、二千もの郵便局が閉鎖を迫られている。こうした事例を参考に、利用者が不便を被ることがないよう、民間参入の道筋を示す必要がある。
安倍政権が小泉前政権の民営化路線を踏襲するならば、重ねての先送りは許されない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20070223/col_____sha_____003.shtml