◇週刊誌テレビ評のライターたち 「裏切られた」「スタッフの職場倫理に問題」…
今年に入って、テレビ局が捏造を認め、謝罪したのは、「あるある」とテレビ東京の「今年こそキレイになってやる!」。物議を醸したが捏造ややらせではないと局が説明したのは、TBSの「人間!これでいいのだ」とフジテレビの「トリビアの泉」。「あるある」は外部の調査委員会が調査中だが、そのほかの3局はこう弁明した(番組内容については表参照)。
テレビ東京は、映像の差し替えについて陳謝したが、会見では「視聴者にわかりやすく見せるためだった」とも説明した。
TBSは「人間!これでいいのだ」について、おわび放送で「データの捏造などはなかった」とした上で「『頭の良くなる音』と断定的にお伝えするなど、行き過ぎた表現から視聴者のみなさまの誤解をまねくこととなりました」と謝罪。
フジテレビは「トリビア」について、「やらせ等とは全く性質の異なるもの」とし、「ご指摘を受け、今まで以上に現場での判断を厳密に行い、ありのままの調査をそのままお伝えする『トリビアの泉』の精神をさらに向上させていきたい」とコメントした。
週刊誌でテレビ評を執筆するライターの人々は、この説明をどう感じたのか。
「納得できません。小馬鹿にされているような気分」というのは丸山タケシさん。特にトリビアは、自身も雑種犬を飼っており、楽しみに見ていただけに「“裏切られ感”が大きい」という。「ぞろぞろでてくる疑惑を考えると、スタッフの職業倫理に大きな問題があるとしか考えられない。番組で、どうしてこんな事態が起こるのか説明してほしい」と語る。
「演出の範囲」という言葉は、90年代に人気を博し、多くのやらせ疑惑がとりざたされたバラエティー「進め!電波少年」で世間に広まった。
桧山珠美さんは「電波少年の演出を知ってから、私はテレビに冷めていったが、今回の件も納得できない。いまは見ている人とテレビ局側の温度が違う気がする。文句を言われたからとりあえず謝るという態度がありあり」といい、検証番組を作ってほしいという。
青木るえかさんは「人間!」でのTBSのおわびについて、「あんな番組つくってるんだからおわびもあんなもんでしょう」。問題になった回の内容の貧弱ぶりには驚いたという。「登場するネタはキワモノばかりで、スタジオの芸能人の反応も、驚いてみせりゃいい、というノリ。相当にレベルが低い、しかし俗悪に徹するという気概もない“ぬるい番組”」と断じる。
一方、「テレビ局のおわびがむなしく響くのは、具体策がなく口先だけだから」と語るのは元TBS社員で『視聴者が動いた 巨大NHKがなくなる』の著者、田原茂行さん。「テレビ局が編集権を自分だけの自由と考えるのは根本的な間違い。その反省を具体化する自己検証番組を放送すべきだ」という。
放送局の制作現場にいる中堅社員は「やらせと演出の線引きは制作者個人によって違うので判断しにくい。“これはやらない”と決めたことはいつも自分で強く意識しなければ、テレビの現場には“演出”の誘惑がたくさんあり、すぐに流される」と現場の危うさを指摘している。