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2007年02月23日(金) 05時54分

皇太子さま会見全文(3)朝日新聞

【質問(4)】ご一家は去年の夏、雅子さまの静養を兼ねてオランダを訪問されました。皇太子さまの私的な外国訪問は異例ですが、オランダ行きを決断された経緯やお気持ちについて詳しくお聞かせください。雅子さまの回復には、なお時間がかかるとの見方もありますが、今後もこうした形での外国訪問をお考えになられますか、あわせてお聞かせください。

〈回答〉外国訪問については、昨年は3月のメキシコでの世界水フォーラムへの出席や、8月のオランダでの静養、そして9月のトンガ国王陛下のご葬儀への出席などがありました。外国訪問は日本と諸外国との友好親善の増進や国際会議への出席など重要な活動であると認識しており、今後とも重視していきたいと思います。オランダ訪問については、かねてよりオランダのベアトリックス女王陛下からのありがたいご招待を頂いていたことや、幼稚園の夏休みの期間がオランダ側にとっても都合が良かったこと、両陛下より温かいご理解を頂いていたこと、さらにはオランダに行くことが雅子の治療上も意味あることというお医者様の意見があったことなどが重なって実現に至りました。オランダ行きは、私たちにとってオランダ王室の方々と交流でき、有意義な体験でした。また、雅子の治療にとっても有益であったと思いますし、愛子にとっても様々な新しい経験をすることができ、良かったと思っています。なおこのような形での外国訪問の計画は今のところ考えておりません。

【質問(5)】羽毛田長官は去年暮れの記者会見で、雅子さまの長期療養を踏まえ、ご夫妻での分担など公務の見直しの必要性について言及し、皇太子さまとお話ししたいと述べました。秋篠宮さまは去年の記者会見で、天皇陛下の公務の大変さに言及されています。羽毛田長官と公務の見直しについてどのような話をされたのか、皇太子さまが公務についてどのようなお考えをお持ちか、ご自身のライフワークなどへのお気持ちも含めてお聞かせください。

〈回答〉すべての公務には「天皇陛下をお助けしつつ、国民の幸せを願い、国民と苦楽を共にしていく」という皇室のあるべき姿が基礎にあります。そのうえで、これをどのようにやっていくかについては、今までの公務を大切にしながら、今後、我が国内外の変化によって重要性を増す分野の事柄について、新たな要請がある場合には積極的に考えていきたいと以前にお話しをしました。そして私が当面重視している具体的な分野としては、以下の四つの分野を指摘しました。それらは環境問題、子供と高齢者に関する事柄、国際的な文化面での交流と諸外国との友好親善の増進、我が国における産業・技術面での様々な新しい動きについてです。

 我が国内外の変化によって重要性を増す分野の事柄について、あえて一例を申し上げれば、冒頭にも述べました水の問題へのかかわりがあげられます。私自身の研究分野である水運の問題も水問題の一翼をになうものであり、世界水フォーラムの場において、日本の水運についてのお話ができたことをとてもうれしくおもっております。水に関して言えば、水運の研究は私の個人的な研究テーマでもありますので、研究をさらに今後深めていき、それが公務を果たすうえでいくらかでも役立てることができればと思っております。

 ライフワークのご質問がありましたけれども、今も触れましたように、水上交通の歴史の研究は今後とも続けていきたいと思っております。日本のみならず外国にも視野を広げて、人や物の動きを歴史的に研究することによって、現代における新しい動きや交通を媒介とした人と人とのコミュニケーションなどについても理解を深められたらと考えております。

 雅子との公務の分担については、そもそも公務といいましても、個々の活動内容が異なり、公的な性格にも濃淡がありますので、ケースバイケースで検討して、その検討過程で2人で行うか、私単独か、あるいは雅子単独での活動となるかという答えが自然とでてくると思います。ただ、公務にはご招待頂く側からの要請があるわけですので、今まで、そのほとんどがわたくしたち二人へのものであることをよく考えて、結論を出していくことが大切だと思います。いずれにしましても、まだ雅子は病気療養中ですので、公務の分担の話は雅子が回復してからの話だと思います。

 私としては一日一日を大切にしながら、皇太子としていま行うべき仕事に邁進していく所存です。

【関連質問(1)】今、殿下が最後におっしゃった、皇太子としての一日一日を邁進していきたいとおっしゃったお言葉がありまして、その前に皇室のあるべき姿として、天皇陛下をお助けしつつ国民と苦楽を共にするというお話がありまして、殿下ご自身が皇太子という立場の重み、あるいは誇りというものを、これまで昭和陛下、あるいは今上陛下からそういうお話を、皇太子としてのお立場の重みや誇りについてお話をされたことがおあるのか、あるいは、ご自身、その重みというのは一番どういうときに感じられるのかということを、何か具体的なエピソードを交えてお話し頂ければと思いまして、質問させて頂きます。

〈回答〉私は幼少の頃から昭和天皇のところに今の両陛下とご一緒にあがる機会が多くありましたけれども、そのような折に、今の陛下が皇太子として色々なことをやっておられる、そういうことを強く感じましたし、それから幸い日常の生活においても、公務によっては成年に達してないと出られないような公務もあるわけですけれども、外国のお客様ですとか、色々な方が来られた時に、私もご一緒させて頂く機会がありまして、そのような折に、今の陛下から皇太子としてのあり方というものはこういうものなんだということを、色々と小さいころからご一緒することによって学ばせて頂いたという感じを強く持っています。具体的なエピソードというと、それは難しいですけれども、その折々に、今の陛下のなさりようを拝見しながら、皇太子というのは、やはり天皇陛下をお助けして、そして、色々な公務に取り組んでいく。そういったことを今の陛下からお側にいながら学んできたように思います。

【関連質問(2)】オーストラリアで出版されました「プリンセス・マサコ」という本について、宮内庁と外務省で、皇室の方々のご活動やお姿について明らかに事実と違う部分があり、また妃殿下のご病気についても非礼な記述などがあるとしまして、著者と出版社にたいし抗議をされたことをご存じかと思います。両殿下でこの本をお読みになられたことはありますでしょうか。また、この件について思っていらっしゃること、お考えなどがありましたらお話ください。

〈回答〉この本については私は特に読んでおりませんけれども、内容については東宮大夫の方からも話は聞いておりますので、大体、内容については把握しているつもりです。ただ、このことについては政府が対応しておりますので、私から、それ以上のことを申し上げることはありません。

【関連質問(3)】

 3問目の質問のなかで、愛子さまのご様子について、幼稚園に入られてから大きく成長されたと殿下がおっしゃっていたのですが、具体的なエピソードというか、幼稚園に入られてからどういう面でより顕著な成長が感じられるのか、お聞かせいただきたいのですが。

〈回答〉やはり今までの生活とくらべて、幼稚園という大きな集団に入って、そこで友達もできて、友達とのお付き合いの中から色々なことを学んでいるように私には思われます。そのなかで特に、友達への思いやりみたいなものですね、だれかが休んでいたりするととても心配をしたりとか、だれだれがちょっとケガをしちゃったけれども大丈夫だっただろうかとか、そういうふうな人に対する思いやり、人のことに対する心配というか、そういうことを折々に私も愛子から聞きまして、成長しているんだなあというふうに、親としても嬉しく思うわけです。

http://www.asahi.com/national/update/0223/TKY200702230029.html